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『教誨師』 大杉漣最後の主演映画。傑作です!

(C)「教誨師」members

 大杉漣が初めてプロデュースした作品だ。それが、最後の主演映画となってしまった。教誨師(きょうかいし)とは、刑務所や少年院で受刑者の心の救済に務め、改心できるように導く篤志の宗教家のこと。全編ほぼ接見室という限られた空間の中で、大杉扮する教誨師の牧師と6人の死刑囚の“対話”が繰り広げられる。

 監督は、大杉が死刑に立ち会う刑務官役で出演した吉村昭原作の映画『休暇』で、脚本を担当した佐向大。今回は彼のオリジナル脚本である。セリフの量は膨大だが、あくまでも受けの芝居に徹する大杉に対し、死刑囚たちの6人6様のアクの強さはハンパなく、その中から、世界に逆行して死刑存置派が圧倒的に多い日本社会への危機感が浮かび上がる。ただし、それが声高にならないのが巧妙で、ユーモアのスパイスが効いているのだ。

 一方で、これは映画表現の可能性にも挑戦した作品。窓すらない接見室での会話劇を、映画としてどう成立させるかという創意工夫に満ちているのだが、それ以上に驚かされたのが、ラストだ。示唆に富んだエピソード、映画史に残るほど絶妙のタイミングで切り替わるスクリーンサイズ、そして見事な大杉のラストカット…。映画作家として類いまれな才能を持ちながら、これまでどこかで自らの欲求に歯止めを掛けていた佐向大が、ついに野心を解き放った瞬間だろう。傑作! ★★★★★(外山真也)

監督・脚本:佐向大

出演:大杉漣、玉置玲央、烏丸せつこ、五頭岳夫、小川登、古舘寛治、光石研

10月6日(土)から全国順次公開


(共同通信)