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『Your Song』Mr.Children著 腹に来る

 

「一番きれいな色も一番ひかってるものも、金メダルに決まってんだろが」と居酒屋でくだをまいたのは2008年。

「元カノと知り合いのお葬式で会ってさ、どうしよう、僕『ロザリータ』が頭の中で延々に流れてる」っていう友達の話を能面みたいな顔で聞いていたのは、たしか2011年かな。

 望むとも望まざるともやたら耳にするミュージシャン、第一位に輝くMr.Children(アリー調べ)。気づけばデビューから四半世紀超、もうこれ、国民的バンドつってなんら問題ないでしょう。

 本書はそんな彼らのデビューから現在まで、すべての楽曲の歌詞を一冊にまとめた全曲詩集だ。開いて目を通すと、流れる流れる、頭の中で彼らの歌と当時のことが、事細かによみがえるから不思議なものです。ああこの曲入ったアルバムを中学のとき担任の女教師に貸したら、「私この曲が好き」って言われて無性に腹立ったなぁとか、懐かしい。

 と、ペラペラめくりあらためて思う。初期の歌詞の振り幅のとんでもなさが、圧巻なのだ。

 だってすごくない?

「夕暮れの海に ほほを染めた君が 誰よりも 何よりも 一番好きだった」(君がいた夏)なんてふわっとしたことを歌い、さわやかバンドの皮を被っていたデビュー当時。しかし気付けば、「失くす物など何もない とは言え我が身は可愛くて」(深海)「君しかいない 君こそ未来 言葉は皆 空虚 宙に舞うんです」(ボレロ)

 ……なんて歌うようになってますからね。しかも、その間わずか4、5年で。さわやかバンドの皮、剥ぐの早!

 そういえばこの頃、ボーカルの桜井和寿は抱かれたい男から一転、グラドルとの不倫が報道されて、ボロカスに叩かれてました。前妻とは不倫報道から3年後の2000年5月に離婚。そのわずか一ヶ月後の2000年6月に桜井はその不倫相手と再婚するわけです。その怒濤の時期の曲の凄みたるや、です。

 いやー、こんなにさらけ出しつつ売れてるバンドって他にいるかな。桜井和寿の私生活の浮き沈みが、「思い出のアルバム」状態で浮き彫りになっているんですよね。清濁全部剥き出しで、ドロッとしたものを吐き出して、あれ?あのさわやかお兄さんはどこ行ったの?という変わり身の早さ、正直さ。だからまぁ、最近の桜井家は曲から察するに、落ち着いていらっしゃるようで、それもまたよかったねと思ったりもしますが。

 なんか……お腹いたくなってきた。桜井和寿の全身全霊が、ある意味曲よりダイレクトに伝わる全曲詩集は、なんだかずっしり腹に来る。

(文藝春秋 2200円+税)=アリー・マントワネット

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(共同通信)