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『ヘレディタリー/継承』 怖い上にラストの救いのなさ。覚悟して観て!

(C) 2018 Hereditary Film Productions, LLC

 今年のサンダンス映画祭で話題となったホラー映画だ。謎めいた祖母が亡くなったことを発端に不可解な出来事に見舞われていく一家の話で、『エクソシスト』『オーメン』の系譜に連なるオカルトもの。それでいて、アート映画のようなたたずまいも併せ持つ。

 監督は、これが初長編となる新人なのだが、まるでホラーマスターのよう。まず、怖がらせ方のツボを心得たディテールにうならされる。例えば蟻や蠅の不快なうごめき、ツリーハウスの赤い暖房の光、不敵に笑うガラスに映った自分の顔、耳障りな妹の舌打ち音…何より胴体のない首と首のない胴体。そんな一つ一つ積み上げていく恐怖に加え、そもそもこの家族、最初から普通そうでどこか普通じゃない。分かりやすくではなく、何となくの違和感を頭の片隅に植え付ける語り口もうまい。

 そして極めつけは、アーティストである母親が作るドールハウス。これはもちろんこの家族のメタファーであり、アート映画のたたずまいに直結するアイテムなのだが、同時に人形とホラーは相性が良く、恐怖をジワジワと浸透させる通奏低音のような効果も担っている。ホラー映画は、モンスターや殺人鬼が襲ってくる瞬間よりも、静かな時ほど怖いから。その上、怖いだけでなく後味も笑ってしまうほど悪い。救いがないとは、こういうラストを言うのだろう。覚悟して観てほしい、でも観逃せない完成度だ。★★★★★(外山真也)

監督・脚本:アリ・アスター

出演:トニ・コレット、ガブリエル・バーン、アレックス・ウォルフ

11月30日(金)から全国公開


(共同通信)