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『グレイヘアの美しい人』主婦の友社編 灰を選べど、灰になるまで

 

 あのほら、誰だっけ、「母さん女はいつまで女ですか」って訊いたら、火鉢の灰をかき回してた母さんが静かに灰を指す、あのエピソード。あれを思い出すんですよね、本書を読んでいると。

 グレイヘア、つまりカラーリングをせず、白髪混じりのヘアスタイルを提案している本書。若さを無条件に礼賛するのではなく、自然が与えてくれた、自分らしい美しさを大切にすることを勧めている。インタビューにコラム、グレイヘアだからこそ似合うスタイルを紹介するファッションページ、「白髪混じり」という迷いの中をどう乗り越えているか対談、グレイヘアに品格を与える和装とメイクの紹介……。ありとあらゆる角度から、グレイヘアの魅力や挑戦するにあたってのアイデアを紹介している。

 ページをめくる間ずっと、感じていることがある。当然っちゃ当然なのかもしれないけど、掲載されている人達押し並べて、めっちゃめっっっちゃ、美人じゃないですか……!?

 表紙を見たら明らかですが、このレベルの美女がずーーーーっと出てくるんですよ?

 世の中の白髪染めしてる人はこんなんばっかじゃないですよ絶対。そら似合うわグレイヘア、って感情と、そんだけ美しいんだから若く見せときゃいいのに、という感情、そもそもなんで染めないのか、そんな疑問なんかが浮かんでは消え浮かんでは消え状態。

 そんなモヤモヤを抱えながら読んでいたら、ひとつの記事が目に留まった。表紙のモデルを務めた映像翻訳家の宮原巻由子さんのインタビュー。美魔女としてメディアに取り上げられたこともあるという彼女。その際、「もっといろいろな美しさがあってもいいんじゃないか」と思っていたんだとか。

 そっか、なるほどなぁ。美魔女ブームって、「こんなに歳いってるなんて信じられん」っていう、若さを褒め称える風潮でしたよね。でも刻一刻と、少しずつ若さはなくなっていくわけで、そしたら私の価値は消えてなくなるのか?という疑問が湧くのは当然だし、そんなことない!私の価値は若さだけじゃない!って抗いたくなる気持ちもわかる気がする。

 いろんな人がいますから、もちろんいろんなモチベーションがあるんだと思うけど、日本ではまだまだ「グレイヘア=おばあちゃん」というイメージは根強い。残念ながら。そしてどんだけウーマンリブだなんだっつっても結局まだまだ「女は若さ、男は経済力」に価値を置かれている2018年に、グレイヘアを提唱するのは、やっぱり相当の勇気もいるだろうし(いらない人もいるだろうけど)。

 女性を縛っているものはなんなのか、解放されるためにできることはなんなのか、そして自分で自分を縛っているものはなんなのか。そんなことに思いを馳せる本書でした。まぁ、白髪白髪、グレイヘアグレイヘアってこんなにも拘るのって、自由になってるようで逆に不自由というか、意識してるように思えるのですが、繊細な問題ですよね。そら内館牧子先生クラスまで行ったら「究極のナチュラル、それはグレイヘアを忘れること」なんて言えるけど……。その境地にたどり着くまでの揺らぎもまた、女性が抱く複雑さを表してるように思います。当然ですよね、だって灰になるまで女なんだもの、葛藤があって当然。にしても達観してるなひらり。

 えーと、余談ですが私は明後日、染めに行きますけどね!

(主婦の友社 1200円+税)=アリー・マントワネット


(共同通信)