エンタメ

駒作りから広がる世界

 自宅の工房で自作の駒を手にする林さん

 10月は台北へ。当初はプライベートの旅行として計画していたのですが、10月10日が「中華民国国慶日」という台湾の祝日で、ちょうどみんなが集まりやすいということで支部例会が開催されることになりました。

 例会の場所は林震煌さんのマンションの集会室。昨年2月にこのコラムで書いた「台湾産の駒」の作者です。

 今回は林さんにお願いして、指導対局前に駒作りの現場を取材させていただきました。

 将棋では長い付き合いになりますが、ご自宅に伺うのは初めてです。

 台湾師範大学の教授のお宅ということで興味津々でドアをあけると、玄関先から本の山に遭遇。床から視線の高さまで積み上がり、その圧倒的な量に床が心配になるほどです。

 そして本に囲まれたリビングの中央辺りにある机二つが、林さんの工房となっていました。

 あちこちに設置された工具、数々の素材。いったいいくつの品物がこの空間にあるのでしょう!

 「すべては将棋から始まりました」と林さん。将棋を始めたのは日本の九州大学に在学していた1993年。仲間うちで将棋を購入してルールを覚え、台湾に戻ってからは台北支部創設時の2002年から会員となって続けています。

 駒作りは2012年に駒師が台湾に来たときに教わったということです。

 必要な道具類はほとんど自作。短く切って瓶の中に収められた刷毛、注射器を使った漆の保管など、使いやすいようにさまざまな工夫が凝らされていました。

 さらには字母紙(駒の字の元となる紙)を自分で作るためにと、書道を習い始めて3年になるとのこと。

 将棋駒はこれまで15組ほど作り上げたそうです。それに限らずプレゼント用として駒根付を彫ったり、看板を作ったり。最近ではバイオリンの制作にも興味が出てきて、教室に通っているそうです。

 「夢がつながりますね。定年したら北海道に住んでカヌーを作りたいです」。阿寒湖の近くに彫りの先生がいると、笑顔で語ってくれました。

 台湾には明るくて親切な方が多く、林さんはそのモデルのように、いつもにこやかで優しい方。今回お話を伺って、その博識、強い探究心、そして次々と作品を作り出していく創造力にあらためて尊敬の念を抱きました。

 支部例会の指導対局では林さんの駒を使わせていただき、こんな素敵な駒で将棋が指せることは幸せだなと感じました。(北尾まどか)


(共同通信)