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『赤い雪 Red Snow』 新人監督とは思えない「技」の確かさ

(C)2019「赤い雪」製作委員会

 短編が映画祭などで評価されているとはいえ、今回が初長編となる無名の女性監督のデビュー作に、メジャー大作『64-ロクヨン-』で共演した永瀬正敏、菜葉菜、佐藤浩市、夏川結衣と、さらには井浦新まで集った。もちろん、そこにはプロデューサーの貢献があるわけだが、彼女に相応の才能があることは間違いない。

 30年前に雪が降り積もる村で起きた少年の失踪事件。一緒にいた兄は、心に深い傷を負う。一方、誘拐の容疑者で別の殺人事件への関与も疑われていた女には、事件の一部始終を見ていたはずの娘がいた。そんな二人を、事件を追う記者が結びつけ…というミステリー仕立てのサスペンスだ。

 テーマは「記憶」。それだけでも、この新人監督・甲斐さやかを信用できる。映画と親和性の高い題材だから。もちろん、オリジナル脚本によるデビュー作にそういう題材を選んだだけあって、演出手腕も確かだ。例えば、計算された空間設計。ここではトンネルやドア、窓などを使った“フレーム内フレーム”の画面が多用されるが、その一つとして“覗く”という行為が繰り返される。そして、それをクライマックスで記憶のテーマと見事に融合させる才覚は、とても新人の技とは思えない。海に面した“島”という舞台設定や赤色の使い方、頻出する夜のシーンの隙のなさにも感心させられる。日本映画界にまた一人、頼もしい才能が登場した。★★★★★(外山真也)

監督・脚本:甲斐さやか

出演:永瀬正敏、菜葉菜、井浦新、夏川結衣、佐藤浩市

2月1日(金)から全国順次公開


(共同通信)