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『僕らの色彩 1』田亀源五郎著 自分が自分でしかない苦悩

 

『弟の夫』で文化庁メディア芸術祭優秀賞を受賞した、漫画家であり「ゲイ・エロティック・アーティスト」の田亀源五郎。最新作は、一人の高校生とその周囲の人々を描いた青春ドラマの第一巻だ。

「『俺は男が好きだ』その秘密が、自分を、相手を、追い詰める――」。主人公の井戸田宙(そら)は、クラスメイトの吉岡健太に片想いをしている。宙は自身がゲイであることを、幼馴染の仲村奈桜(なお)にも言えずにいた。ある日、宙は吉岡が友人たちと「ホモなんて気持ち悪い」とふざけあっているところを目撃してしまう。ショックを受け、衝動的に学校を飛び出した宙。海まで逃げ、防波堤に寝そべっていると、見知らぬ年配の男性が近づき「好きだった」と突然告げられ……。

 読んでいてヒリヒリとした痛みが伝わってくる。誰も悪くないのに、少しずつ誰かを傷つけ合うのは青春ゆえの「あるある」なのか。これまでセクシャリティに関して(宙ほどは)深刻に悩んだことはないはずだが、それでも読んでいて迫ってくるのは、田亀氏が自身と向き合い続けた結果なのかもしれない。

 また印象的なのは、幼馴染でありのちに宙の理解者となる奈桜(めちゃいい子!)をはじめ、「非ゲイの登場人物の描き方に説得力がある」ことだ。奈桜は、中学生のときに宙と付き合ってるんじゃないかと周りから冷やかされ、以来宙のことを意識していた。彼女は宙がゲイであることを偶然知ってしまうが、それを受け入れ、理解者であろうとする。その葛藤や感情の着地がとても鮮やかに描かれていて、ああ、作者の田亀源五郎という人は、人の痛みや感情を見つめてきた優しくて繊細な人なんだろうな、と思わせる。

 ゲイの高校生が主人公ではあるが、「自分が自分でしかない苦悩」という、誰もが一度はぶつかるであろう普遍的な青春を描いた物語。見えてる範囲が世界のすべてで、その先を知らなかった彼らが、どんな豊かな大人になっていくのか、これから先が楽しみだ。

(双葉社 620円+税)=アリー・マントワネット

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(共同通信)