社会

北海道・鈴木知事の感染防止対策に評価 「道民の命を守る英断」

緊急事態宣言を出して記者会見する鈴木直道北海道知事=札幌市中央区の道庁で2020年2月28日、竹内幹撮影

 全国で新型コロナウイルスの感染が拡大する中、防止対策を巡る北海道の鈴木直道知事の決断や発信力が注目されている。当初は感染者情報の開示の不手際で批判を受け、一時は都道府県で感染者も最多となったが、2月下旬から学校の全道一斉休校要請、緊急事態宣言、重点対策地域の指定など、全国に先駆けて先手を打ち、評価を上げた。ただ、収束が見通せない中で新学期当初からの学校再開を決断。さらに自粛で冷え込んだ経済対策も急務だけに知事の正念場はこれからと言えそうだ。【真貝恒平】

 「自分の言葉で話し、分かりやすい。今までになかった印象だ」と自民会派のある道議は最近の知事を評価する。就任直後の2019年夏、自らの要請で新千歳空港の発着枠拡大が決まった際には官邸とのパイプを強調したが、ある道庁幹部は最近の言動について「専門家などの意見を参考にしているが、自ら考え、対策を進めているのでは」とみる。

 しかし、当初からリーダーシップを示せたわけではなかった。「国籍を発表することが道に伝えられず、(厚生労働省と)行き違いがあった」。2月17日の会見で知事は、道内2例目の感染者の国籍や居住地域の公表が遅れたことを「道民が不安を持ったことは申し訳ない」と謝罪した。だが、その後も振興局単位での公表にこだわる道と、独自に居住地を発表する自治体との間で調整できず、混乱が続き、道民から「情報が少なすぎる」など、より詳細な情報を求める声が殺到した。

 変化したのは、知事が加藤勝信厚労相に電話で要請し、2月25日に厚労省から派遣された国立感染症研究所の専門家が道の対策チームに加わってからだ。感染者数が全国最多となり、27日には最多の15人の感染を確認すると、28日に「緊急事態宣言」を発表。法的拘束力はなく、「お願いベース」ながらも全道民の外出自粛に踏み込んだ。

 宣言について、知事は国からの指示は否定したが、現在、感染が拡大している道外で行政が講じる対策と重なるのも事実。立憲民主党会派のあるベテラン道議は「経済対策の準備もないまま、あの宣言はあまりにも唐突だった」と批判した上で「首相の追随対応を見ていると国の思いを先取りしたやり方ではないか」と指摘する。

 宣言後、初の週末となった2月29日、3月1日では、一律的な要請に道民からは戸惑いの声も上がったが、その後の週末は専門家の意見を踏まえ、条件を緩和して経済活動のバランスに配慮する柔軟さも見せた。知事のツイッターでは、「道民の命を守る英断」「リーダーシップは素晴らしい」という称賛の声が相次ぎ、マスク姿で会見する知事の姿がおなじみとなった。こうした反響について、ある道庁幹部は「知事は自分の考え、対策がどう受け止められているか、結構気にしているようだ」と話す。

 また、中国では「結果責任は私が負います」という記者会見の内容が翻訳され、支持を集めた。

 3月19日に「爆発的な感染拡大や医療崩壊は回避された」として予定通り宣言を終了。同日の政府専門家会議は、道の対策について、1人の感染者が2次感染させた平均的な数を示す「実効再生産数」が宣言発表後は継続的に1を下回ったとし「クラスターを十分把握したことで感染症を一定の制御下に置くことができた」と評価。札幌市の秋元克広市長も「道民、市民の行動を変えるきっかけになった」と前向きに受け止める。

 一方、外出自粛の代償となった経済への悪影響は深刻さを増している。「ガソリン代にもならない。まだ街が止まったまま」。3月下旬、札幌の街を走るタクシー運転手の男性はため息混じりに話した。宣言後、客足は遠のき、まだ回復しないという。道の試算では感染拡大の影響が6月まで続いた場合、道内観光への影響額は約3680億円で、全道的な停電が起きた18年9月の胆振東部地震の10倍以上だ。道は中小企業支援を柱にした緊急対策に計277億円の補正予算を決定したが、函館市内で宿泊施設を運営する経営者の男性は「インバウンド(訪日外国人客)が全く来ないのが大きく、破産している企業が出始めているので、経済対策に着手するのが遅い」と嘆く。

 道内は感染者の増加傾向に一定の歯止めがかかっているが、首都圏を中心に感染拡大しており、予断を許さない状況はこれからも続く。知事は今後、感染拡大防止と社会経済活動を両輪で進める「新たなステージに移行する」という「北海道モデル」をどれだけ具体的に示して実現できるかで真価が問われる。 


(毎日新聞)









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