社会

「コロナさんに負けるな」 希望の一言添え弁当販売 大阪の障害者が働く食堂 

「ありがとうございました!」。店頭に明るい声が響く=大阪府吹田市寿町1で2020年4月17日午後0時16分、三角真理撮影

 「コロナさんに負けるな」――。新型コロナウイルス感染拡大の中、障害者が働く大阪府吹田市の食堂は、持ち帰り弁当の販売に完全に切り替えることで、活動を続けている。地域の人に支えられ、用意する40食は毎日ほぼ完売。弁当にはメンバーが書いたメッセージカードが添えられている。見守る職員が明かす。「自粛が重なる中、メンバーの心の浮き沈みは激しくなり、毎日とにかく必死。きっと『私も頑張っているから、みんなも頑張ってね』という思いで書いていると思う」【三角真理】

 店の名は「ウノアオトロ」。スペイン語で「お互いに」の意味から「みんなで助け合おう」との思いが込められている。

 20~50代の障害者約20人が、これまでは定食を作ったり、パンを焼いたりしていた。4月に入ったころ、職員たちの間で「店はやはり閉じるべきか」「メンバーの仕事を奪うことにならないか」と検討が始まった。気配を察した常連客からは、「店、どうするの? お弁当になっても買いに来るから続けて!」「頑張ってほしい」の声。その“声援”に背中を押されて、職員たちは弁当販売に絞って続けようと決定した。

 それまで店内で定食を40食、持ち帰り弁当を10食提供していたのを、弁当40食にした。販売は「元気で活動していることを知らせたい」と店先に机を出して弁当を並べるスタイル。さらに、職員の谷中泉さん(42)がメッセージカードを付けることを提案した。谷中さんは、例として「ありがとう」などの言葉を示したが、メンバーたちは全く異なる自分たちの思いを書いた。

 「早くコロナさん落ち着く事を願って大勢の人が来る事を待っているよ」。「コロナさん」とやさしい響きでつづったのは高呂美紅(みく)さん(21)。「お皿洗いの仕事が好きなので、それがなくなり寂しいです。でも完売したときは気持ちいいです。店頭で立ちっ放しはしんどいけれど、そんな顔はできないので、これも勉強になります」と明るい。

 「前は向かなくていい みんな一緒だ みんながついてる」と書いたのは、この施設に17年通う西川正晃さん(46)。「今、地球上のみんなが同じように大変な状態。無理したら、余計にしんどい。私はこの施設でみんなと一緒にいて救われた。自然に湧いた言葉です」と気負わずに話した。

 メッセージを読んだお客さんからは「いいねえ」の感想が漏れる。

 ある日のお昼。店頭では「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」と購入のやりとりだけが交わされていた。でも客は温かい。以前からの常連という会社員、角明弘さん(62)は「声をあまり出せなかった子が、しっかり出すようになったりする姿を見てきました。応援したくて買いに来ています」と話し、自動車関連業の山崎大介さん(47)は「お互いに働く者同士として、みんなが働いている姿を見るとうれしくなる」とお弁当を提げて職場に戻った。日替わりで、チンジャオロース、ぶりの照り焼き、コロッケ……家庭の味がおいしい。みそ汁付きで550円。男性は小銭をうれしそうに出していた。

 メンバーの牧野愛さん(38)は「友達がコロナに気をつけるため休むようになったのが寂しいけれど、ここに来ると、みんなでまかないを食べられるのが楽しい。お皿への盛り付けを教わっていたのを忘れないようにしたい」と、今は弁当箱への詰め方を学んでいる。

 西川さんの書いたメッセージをもう一つ。「コロナをコロコロ転がせば やがて希望が転がってくる」


(毎日新聞)









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