国際

新型コロナで息をふきかえしたIS イラク、シリア、エジプトで攻勢

 中東各国が新型コロナウイルスへの対応に追われる中、近年弱体化していた過激派組織「イスラム国」(IS)がイラク、シリア、エジプトなどで攻勢を強めている。特にイラクでは政治勢力間の対立や駐留米軍部隊の一部基地からの撤退で、「治安の空白地帯」が部分的に生じており、ISが勢いづいている模様だ。

 AP通信などによると、イラク北部サラハディン県では2日未明、複数地点で起きたISとの戦闘で、シーア派民兵組織「人民動員部隊」(PMU)の10人が殺害された。また、北部キルクークでは4月下旬、自爆ベストを着用したIS戦闘員とみられる男が、情報機関のビル前で自爆し、警備担当者3人が負傷した。ISの攻撃は一時は地方行政当局者らの暗殺などにとどまっていたが、最近では爆弾攻撃や、警官や軍への待ち伏せ攻撃も行うようになっているという。

 イラク情報当局の調べでは、同国内のIS戦闘員は現在3000人程度とみられる。クルド自治区のタラバニ副首相は「ISは現在、イラク北部で攻撃を行っているが、今後は首都バグダッドも標的にするだろう」と指摘する。

 イラクでISが息を吹き返した要因としては、新型ウイルス対策として政府軍が勤務人員を半減▽イラク中央政府とクルド自治政府の政争で一部地域が無法地帯化▽米軍部隊が3月にイラク国内の複数の基地から撤退――などが挙げられている。新型ウイルスの感染拡大と米軍撤退開始の前は週1回程度だった攻撃頻度が、現在では月20回程度まで増えているとの分析もある。

 イラク軍当局者は、ISのより組織的な攻撃は、米軍による前最高指導者バグダディ容疑者の殺害を受けて2019年10月に就任したアブイブラヒム・ハシミ新指導者の影響力強化にもつながるとみる。イラク政府は17年12月にISに対する勝利を宣言したが、IS戦闘員は山岳地帯などに潜伏して反攻の機会をうかがっていたようだ。

 内戦が続くシリアでも、3月下旬ごろからISの攻撃が各地で盛んになった。4月9日には中部スフナ近郊でISがアサド政権軍の陣地を攻撃し、2日間の戦闘で政権軍兵士32人とIS戦闘員26人が死亡した。シリア北部ではクルド人中心の治安部隊や油田地帯が攻撃対象となっているという。

 ロイター通信によると、エジプトのシナイ半島北部では4月30日に過激派摘発の作戦に従事していた軍の装甲車列が爆発物で攻撃され、10人が死傷した。直後にISが犯行声明を出した。一方、エジプト内務省は5月3日に警察の治安部隊が、シナイ半島北部でイスラム過激派戦闘員18人を殺害したと明らかにした。同日にはエジプト軍も「最近の作戦で戦闘員126人を殺害」と発表しており、戦闘が激化している。【真野森作】


(毎日新聞)









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