社会

米国が9年ぶり有人飛行 NASAとスペースX、新型宇宙船打ち上げ成功

打ち上げられた有人宇宙船「クルードラゴン」=NASAのサイトより

 米航空宇宙局(NASA)と米宇宙ベンチャーのスペースXは日本時間31日午前4時22分(米東部時間30日午後3時22分)、米フロリダ州のケネディ宇宙センターから宇宙飛行士2人を乗せた新型宇宙船「クルードラゴン」を打ち上げ、国際宇宙ステーション(ISS)への軌道投入に成功した。宇宙船は日本時間31日深夜、ISSにドッキングする予定。

 当初は日本時間28日に打ち上げ予定だったが、天候を理由に延期されていた。米国の宇宙船による有人飛行はスペースシャトルが引退した2011年以来、9年ぶり。民間企業が主体となって開発した宇宙船による有人輸送は初めて。ロケットは先端にクルードラゴンを搭載したスペースXの「ファルコン9」で、宇宙開発への民間参入が加速しそうだ。

 1981年に初飛行したスペースシャトルは再利用できる点を長所としていたが、全長37メートルと大型で運用に多額の経費がかかった。機体を失い、宇宙飛行士が死亡した2度の深刻な事故の影響もあり、11年に引退。以降、ISSへの飛行士の輸送手段はロシアのソユーズ宇宙船だけだった。NASAは現在、日本人宇宙飛行士の分も含めてロシアから座席を購入する形式で人を運んでいる。

 一方、クルードラゴンは高さ8・1メートル、直径4メートルと小型のカプセル型宇宙船。シャトルの後継機を低コストで開発するため、オバマ政権下の10年から始まった「商業乗員輸送計画」の下で造られた。NASAはスペースXに加え米航空機大手ボーイングなど複数の企業に出資し、開発を競わせていた。

 当初の予定よりも約3年遅れたが、クルードラゴンは19年3月、無人でISSへのドッキングに成功。他方、ボーイング開発の「スターライナー」は同年12月、無人でISSに到達できず失敗した。12年からISSへの無人補給機「ドラゴン」を運用していたスペースXの優位性が発揮された形だ。NASAは今後、スペースXなどから輸送サービスを購入することになる。

 今回の打ち上げは「最終試験」の位置づけで、NASAのロバート・ベンケンとダグラス・ハーリーの両ベテラン飛行士が搭乗した。宇宙船は全自動で航行できるが、2人はドッキングの一部作業を手動で試す計画だ。ISSには1~2カ月程度滞在し、海上にパラシュートで帰還する。

 2人は打ち上げ後に船内から動画中継に出演。宙返りして無重力状態を紹介したほか、搭乗した機体に「努力」を意味する「エンデバー」と名付けたことを明かした。2人がスペースシャトル「エンデバー」で最初の宇宙飛行を経験したことにもちなんだという。

 クルードラゴンは帰還後に安全性が確認されれば、8月末にも打ち上げられる次回の本番ミッションで、野口聡一宇宙飛行士(55)が米国人飛行士3人と搭乗し、ISSでの半年間の長期滞在に向かう。野口さんは「民間会社として初めての宇宙への本格的な挑戦で、米国では非常に注目されている。打ち上げ時の安全やドッキングについては心配していないが、有人試験なので(生命維持に関わる)環境制御がきちんとなされるか、注目したい」と話している。

 米国は今回の打ち上げを「米国の最優先ミッション」(ブライデンスタインNASA長官)と位置づけ。NASAは「打ち上げる」「(事業などを)始める」という意味を持つ用語を使って「LAUNCH AMERICA」と銘打ち、今回の有人宇宙飛行再開の意義を前面に打ち出していた。2人の飛行士はISSに新型コロナウイルスを持ち込まないよう、隔離を経てから搭乗した。

 打ち上げ成功を受け、トランプ米大統領は現地での演説で「今日の打ち上げは商業的な宇宙産業の未来を明確にした。NASAにとっても歴史的な転換点だ。我々は威信を取り戻した」と述べた。人類の火星移住を目指すスペースXのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は記者会見で「まずは多くの人が他の惑星を旅行できるようにしたい。難しい目標だが、今日の成功でますます現実味を帯びてきた」と述べた。【池田知広、塚本恒】


(毎日新聞)









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