社会

初戴冠・藤井新棋聖、謙虚に「成長したい」 敗れた渡辺「すごい人が出た」

棋聖戦五番勝負第4局で勝利し、最年少でタイトルを獲得して記者会見で色紙を披露する藤井聡太新棋聖=大阪市福島区の関西将棋会館で2020年7月16日午後8時40分、木葉健二撮影

 若き挑戦者の最後の手に、負けを確認した渡辺明棋聖(36)が頭を下げた。同時に礼を返す挑戦者。10時間を超す激闘の末、藤井聡太七段(17)がタイトルの最年少獲得記録を30年ぶりに塗り替えた瞬間だった。19日に18歳の誕生日を迎える高校生棋士は「今回の五番勝負で得たものがいろいろあったので成長につなげたい」と喜びを謙虚に表し、無限の可能性を感じさせた。

 関西将棋会館(大阪市福島区)で16日に指された棋聖戦五番勝負第4局。同会館は、10歳で奨励会に入会したときから修業を積んできた藤井のホームグラウンドだ。定刻の午前9時、現役最年長で棋聖3期の実績を持つ桐山清澄九段(72)が開始を告げた。

 先手番の渡辺は開幕戦から連敗を喫した「矢倉」の戦いにあえて誘導。中盤まで、渡辺の鋭い攻めに藤井が防戦に回る。しかし、決め手を与えず終盤に突入すると、藤井が渡辺の意表を突くように、相手の玉を左右から挟んで攻める。一気に勝勢を築くと、そのまま勝ちきった。同会館の周囲には大勢のファンが詰めかけ、藤井が勝利すると、「おめでとう」と歓声が上がり、拍手で祝福した。

 これまで数多くのタイトル戦を経験し、初めて年下の棋士に敗れた渡辺は「競ったところで負けているので、すごい人が出てきたという感じですかね」と脱帽した。

 終局後、藤井は記者会見に臨み、「初戴冠」と揮毫(きごう)した色紙を掲げ、師匠の杉本昌隆八段(51)から花束を受け取ると、満面の笑みを見せた。師匠への思いを聞かれると、「一つ恩返しができたのかなと思っています」と語った。

 藤井は今年に入って棋聖戦と王位戦で挑戦権に向けて勝ち続け、4月には両棋戦の挑戦者決定戦が行われる予定だった。だが、新型コロナウイルスの感染拡大で、日本将棋連盟が長距離移動を伴う対局を延期したため、愛知県在住の藤井は4月10日を最後に対局から遠ざかった。

 対局が再開するまでの約2カ月間を、藤井は「自分の将棋を見つめ直すことができた」と前向きにとらえていた。再開後は落ち着いた指し回しで勝利を重ね、6月に棋聖戦挑戦者決定戦に勝って、最年少でのタイトル挑戦を決めた。

 大きな注目を集めて迎えた棋聖戦五番勝負。藤井は開幕から2連勝して一気にタイトル奪取に王手をかけた。第3局は落としたものの、第4局でプレッシャーをはね返した。

 師匠の杉本八段はシリーズを振り返り、「自由に楽しく指しているように見えた。AI(人工知能)の評価も覆す一手が出た第2局などは、少年時代の藤井を思い浮かばせた。そんな発想があるんだという手を、昔は頻繁に指していたから」と話し、「格段に強くなって、本来の藤井将棋がベールを脱ぎつつあるのでは」と、さらなる進化を予言した。【新土居仁昌】


(毎日新聞)









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