社会

<エンタメノート>勝ち抜いた若手6人の熱演、四つの見どころ NHK新人落語大賞、23日夕方放送

柳亭市弥さん

 追い風が吹いていた演芸、笑芸の世界も、新型コロナでその風が止まり、多くの芸人も一時は全く仕事がなくなった。特に若手は、平時でも「食うのに精いっぱい」だから、収入が途絶えたまま芸を磨かねばならず、だからと言って苦労をお客さんに見せるわけにもいかない。それぞれが悩みながら精進する日々が続く。

 東西の新人落語家が競う年1回のコンテスト、「NHK新人落語大賞」は、1972年に「新人落語コンクール」でスタートし、形式を変えながら今も続く権威のある賞。東京は真打ち昇進前の二つ目、真打ち制度のない上方は入門15年未満という東京と同程度の若手が参加する。

 今年は2日に本選の収録が行われ、既報の通り、鶴光門下の笑福亭羽光(うこう)さんが優勝した。羽光さんのインタビューは本選の放送後にお読みいただくことにして、ここでは23日夕方の放送前に、中身をあまりバラさずに、見どころを4点、挙げておきたい。

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 まず1点目。今回は東京から66人、大阪から40人の計106人が予選に参加した。本選には6人が進んだから、かなりの狭き門なのだが、今年の予選は新型コロナ感染防止の観点から一次審査はビデオ審査になった。

 もちろん、NHKさんが撮影しに回ったわけではなく、それぞれ出演者が自分で収録したものを提出。何度も撮り直した人、スマホではなく、ちょっといいマイクやカメラに新たに「投資」した人もいるだろう。それも含めて熱意が審査員に伝わった6人が、激戦を勝ち抜いたわけで、本選もレベルの高い争いになった。

 2点目は、本選出場6人のうち、男性が3人、女性が3人と、国会や企業の管理職などではなかなか進まない「男女同数」になったこと。初めてのことだ。講談や浪曲は女性がかなりいるのに、これまで落語の世界は女性が圧倒的に少なかった。東西ともに全体の数もそうだが、女性落語家は着実に増え、実力も付けてきた。

 東からは小朝門下の春風亭ぴっかり☆さん、上方からは女性落語家のパイオニア・露の都(みやこ)門下の露の紫さんと、米二門下の桂二葉(によう)さん。本選を見れば、男女という意識をせずに楽しめるだろう。

 3点目は、審査員に注目。今回の審査員は柳家権太楼さん、桂文珍さんという東西の大御所に、片岡鶴太郎さん、國村隼さん、NHKの担当者の計5人。権太楼さん、文珍さんの出場者への愛のある的確なアドバイスは、例年通り、出場した6人を勇気づけたに違いない。

 そして、師匠方だけではなく、鶴太郎さんも國村さんも、落語をよくご存じで普段から楽しんでいることが伝わってくる。

 さらに、審査員はそれぞれ、事前に本選出場者がどんな芸を見せるのか、「予習」をしてきているようだ。そのあたり、審査員のコメントもお楽しみに。

 司会の林家たい平さんは、漫才などの笑芸と落語を一時期一緒に審査していた「新人演芸大賞」で1993年に優秀賞を受賞。その時の大賞は爆笑問題。うれしさと悔しさ、どちらもあっただろう。

 たい平さんと、こちらも落語好きな南沢奈央さんの司会は、緊張する出演者とベテランの審査員をいじりながら、コンテストとは思えないような、コロナの中で温かい雰囲気のイベントを作り上げた。ソーシャルディスタンスで客席の半分も埋まっていないお客さん、審査員、そして司会の2人が、だんだん盛り上がってくるのが、画面から感じ取れるはずだ。

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 そして最後の4点目。「落語といえば古典、昔の噺(はなし)」というイメージから、新作派の先輩たちの努力で、新作落語を手掛ける落語家はずいぶん増えた。ただ、こうしたコンテストでは、まだまだ古典を手掛ける人の方が多い。

 今回も6人のうち、新作落語は自作「ペラペラ王国」を選んだ羽光さんだけ。その羽光さんが古典の5人を抑えて見事、優勝を勝ち取るのだが、その過程を、惜しくも大賞を逃した5人の奮闘とともに楽しんでほしい。権太楼さんが「正直言うと、群を抜いていました」と羽光さんを評価した理由もわかるはずだ。

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 本選のネタと登場順は次の通り。

 あくび指南 柳亭市弥

 替り目 入船亭小辰

 佐々木裁き 桂二葉

 ペラペラ王国 笑福亭羽光

 権助提灯 春風亭ぴっかり☆

 手向け茶屋(東京落語では「お見立て」) 露の紫

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 NHK新人落語大賞の放送は23日午後4時半から総合テレビで。【油井雅和】


(毎日新聞)









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