社会

「そのお金を医療に回せ!」 コロナ政策「暴走」を漫画でバッサリ 作者の思い

衆院本会議で立憲民主党の枝野幸男代表の質問に答える菅義偉首相=国会内で2021年1月20日午後1時47分、竹内幹撮影

 収束が見えない新型コロナウイルスについて、菅義偉首相ら政府の対応をツイッターで批判した風刺漫画「#100日で収束する新型コロナウイルス」(https://twitter.com/jgz485)が話題になっている。毎回リツイートや「いいね」が数千に上るほどの人気ぶり。連日のように更新し続けている作者のぼうごなつこさん(46)に、連載にかける思いを聞いた。【和田浩明/統合デジタル取材センター】

 ◇「運転席でハンドル握っていない」菅首相描く

 「描く材料がありすぎて、絞るのに苦労しているんです」。そう言ってぼうごさんは笑う。

 連載は2020年12月22日にスタート。大みそかや正月三が日も休まず、今年1月19日で29回を迎えた。1回分が数コマ程度とコンパクトで、その中で政権をストレートに批判しているのが特徴だ。これまで菅首相や安倍晋三前首相、自民党の二階俊博幹事長、西村康稔経済再生担当相などの言動に厳しい視線を送ってきた。

 初回は、安倍政権が昨年4月に出した緊急事態宣言についてだった。「やっと」出したが検査態勢が不十分だと指摘。また、二階氏や菅氏が旗振り役となった一連の「GoTo事業」も感染拡大抑止の観点から問題視した。2回目では、菅首相らが東京オリンピック・パラリンピック開催への「決意」を重ねて表明し、そこに巨額の費用が投入されることに苦言を呈した。そのうえで「だからそのお金医療とコロナ対策に回せっつってんだろ!!!」とストレートに憤りを表現した。

 特に注目を集めたのは、1月3日にアップされた13日目だ。菅首相が「ブレーキ(感染防止)とアクセル(経済回復)を同時に踏みながら、悩みながら判断している」と語った点を取り上げた。漫画では多くの人が乗ったトラックが暴走し、その運転席にいるのが菅首相だと表現し、「問題はハンドルを握っていないことだった」と迷走ぶりをバッサリ。この回の「いいね」は7300件、リツイートは3600件を超え、100件以上の返信があった。

 漫画で描いているように、菅政権の新型コロナ対策は「現実に向き合っていないと思います」と手厳しい。例えば東京五輪にしても「現実的に考えれば実現はできないと思うのですが、首相は『人類がコロナに打ち勝った証し』として開催すると繰り返しています。願望ばかりのように聞こえます」と反発する。さらに、感染予防や患者の治療の面では現場の「頑張り」に頼りきりで、医療関係者を疲弊させているのではないか、とも感じている。

 各種世論調査でも、菅政権の新型コロナ対策の評価は低い。16日の毎日新聞の調査では「評価しない」が66%に達し、内閣支持率は前回の40%から33%まで落ち込んだ。ぼうごさんの漫画が注目される背景には、こうした世論がありそうだ。

 ◇強くなかった政治への懸念 安倍政権で高まる

 もともと、政治に関しては「何が起きているか分からないことも多かった」と言うぼうごさん。特に支持政党もなく、「選挙では、与党がやっていることがおかしかったら野党に入れるというスタンス」だったという。

 時事問題について漫画で発信し始めたのは、10年ほど前からだ。2009年の民主党政権誕生で政治への関心が高まったが、消費税に関する方針や東京電力福島第1原発事故への対応で期待外れだったため、ブログに漫画を描いて批判した。「事務の仕事などをしながらだったから、趣味の世界でテレビのニュースを見て文句を言うような感覚」だったという。

 そして、「第2次安倍政権が発足して随分たってから」政治に強い危機感を抱くようになった。学校法人「森友学園」への国有地売却問題や首相主催の「桜を見る会」問題を巡り、政権に都合の悪い公文書や記録が改ざん、破棄されたりするなどしたためだった。「より多くの人に受け入れてもらいやすい漫画で対抗したい」と考え、ツイッターなどでも発信。20年春には、当時の安倍政権による新型コロナ政策などを風刺した「100日で崩壊する政権」の連載を開始した。初回は経済対策として提案された「和牛商品券」配布に対する世論の批判を描き、1万5000件の「いいね」を獲得しリツイートも7600回以上に及んだ。また、この連載はウェブメディア「ハーバー・ビジネス・オンライン」でも掲載され、書籍化された。

 ◇「現実に向き合わない」菅政権見て新連載

 そんなぼうごさん、どんな暮らしぶりなのだろうか。今回、記者は動画通信ソフトを使って遠隔取材をしたが、ぼうごさんの子どもが発熱していて、子どもたちの面倒を見ながら対応してくれた。漫画家だけでなく事務職のアルバイトとしても働いている。子どもたちが起きる前から漫画を描くこともあったという。また、風刺のアイデアは会社員の夫が提案してくれることもあるという。「おかしな政治に対する、普通の人の怒りを表現したい気持ちがあるんです」。生活者目線からの発信が人気の理由のひとつかもしれない。

 現在の連載を始めた動機について、ぼうごさんは「感染が拡大し医療崩壊と言われる中、子供を2人持つ私自身も不安で、いち市民として何かせずにいられなかった」と語る。タイトルを「#100日で収束する新型コロナウイルス」とした理由は、「新型コロナ収束に向けた意思や、政治に理想を持って現状に『嫌』と言う大切さへの思いを込めました」という。

 現在の連載に対しては、陽性者を発見するためのPCR検査拡充を訴えると「意味がない」といった否定的な反応もあるが、応援、共感してくれる人が圧倒的に多いと感じている。「新型コロナ対策がひどすぎて、政治に関心がなかった人も持つようになってきているのではないか」

 1月5日には、二階幹事長がテレビの討論番組で政府の対策に関し「結果は歴史が評価する」と発言したことを取り上げ、自らを登場させてこう語った。「歴史に評価されるように……私が漫画で記録してますんで」

 一般国民目線で政治をウオッチするぼうごさんの試みは、これからも続く。


(毎日新聞)









  • お知らせ


  • 琉球新報デジタルサービス



  • 会員制サービス






  • 他のサービス