社会

文化か迷惑行為か 神奈川でスケボー取り締まり強化 ボーダー反発

新横浜公園内の「スケボー広場」でスケボーの技を練習するボーダーたち=横浜市港北区で2021年3月18日午後2時12分、池田直撮影

 神奈川県警が、禁止場所でのスケートボードの取り締まりを強化している。スケボーは今夏の東京オリンピックで正式種目となり、競技人口も増える一方で、近隣住民から寄せられる騒音などの苦情も増加。ストリート文化として発展してきたスケボーは路上のパフォーマンスが原点で、取り締まりにはボーダーたちの反発や困惑もある。スケボーは「受け入れるべき文化」なのか、それとも単なる「騒音や危険の発生源」なのだろうか。【池田直】

 ◇横浜市、侵入疑いで15人を書類送検

 戸部署は2020年11月、横浜市西区のみなとみらい地区や横浜駅周辺の商業施設やビルの敷地内にスケボー目的で立ち入ったとして、軽犯罪法違反(立ち入り禁止場所等侵入)の疑いで男性4人を書類送検した。4人は「人が少なく練習しやすい場所だった」などと供述したという。同署は今月4日にも、男性と少年の計8人を同法違反の疑いで書類送検した。これまでに書類送検したのは15人(いずれも不起訴、審判不開始)に上る。

 県警は20年10月からスケボーの取り締まりを強化した。戸部署に、騒音や「接触しそうになった」という苦情が相次いだためだ。19年の苦情件数は約350件で、実際にスケボーで滑走する少年にぶつかった70代男性がけがをした事故もあった。みなとみらい地区の街中で技を決める動画が人気を集めたことも影響したとみられる。

 同署はみなとみらい地区や横浜駅周辺の商業施設の管理者らと協議し、管理者が同年8月にスケボー目的の立ち入りを禁じる貼り紙を掲示した。これに従わなかった場合、30日未満の拘留か1万円未満の科料の罰則がある軽犯罪法違反の疑いで摘発可能になった。

 書類送検されたある男性は「戸部署が厳しく取り締まっているのは知っていた」と話したという。21年は2月末時点で苦情件数は18件と前年同時期(55件)に比べ3分の1に減っており、一定の効果はあるようだ。戸部署は「スケボーをしてはいけないということではない。許可されている場所でやってほしい」と呼びかける。

 ◇「何をもって条例違反なのか分からない」公園の事情

 一方、ボーダーが集まることが多い公園は事情が異なる。横浜市が管理する公園では、スケボーの滑走で設備のへりがかけたり、汚れたりするケースが相次いでいる。市は滑りにくくなるシートを貼るなどして対応しているが、今度はシートの上を滑るようになって黒ずみや損傷が激しいという。

 市営公園では市公園条例が適用され、「危険のおそれのある行為」と「他人の迷惑となるような行為」に5万円以下の過料と定めている。これらを認定するのは市職員だが、「何をもって条例違反なのかを現場がわからない部分がある」(市担当者)といい、条例が制定された1958年以降、スケボーで条例違反を適用した例は一件もない。市は商業施設のようにスケボー目的の立ち入りを禁じることについては「公園は公共施設のため難しい」と頭を抱える。

 スケボー専用の施設としては、新横浜公園(横浜市港北区)に国内最大規模の「スケボー広場」がある。ただ、こうした施設には中級者以上が集まる傾向があるという。横浜市中区の象の鼻パーク近くでスケボーを楽しんでいた男子大学生(20)は「あまりうまくないので恥ずかしい。引け目を感じる必要はないとわかっているが、ストリートで練習してからという思いがある」と話す。

 ◇「カルチャーとして理解してもらうには時間必要」

 県警が摘発を強化する現状に、ボーダーたちは風当たりの強さを実感している。この大学生は、滑る前にまず禁止されていないか、看板を確認するようにし、歩行者との接触や進路の妨害などには細心の注意を払うようになったという。

 スケボー広場でスケボースクールを運営する会社の代表は「スケボーはもともと街の中で滑り、自分を表現するカルチャー。日本ではそれがまだ受け入れられていない」と説明する。

 県警の取り締まり強化については「禁止される場所がもっと増えれば、ボーダーはどこで滑ればいいかわからなくなる。ただ締め付けても反骨精神をあおるだけで効果がないと思う」と危惧する。

 ボーダーに対して寛容な街であれば、ボーダー自身が互いの行動に目を光らせ、迷惑行為が減る可能性もある。「カルチャーについて理解してもらうまでには時間がかかるだろう。まずはボーダーがマナーを守っていくしかない」


(毎日新聞)









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