政治

菅首相の初訪米で弱点露呈 思惑通りにいかなかった記者会見

会談後、バイデン米大統領(手前)と共同記者会見に臨む菅首相=ホワイトハウスで2021年4月16日、AP

 菅義偉首相の初訪米は予定された日程を終えたが、最大の対外発信の場であるバイデン米大統領との共同記者会見は、日米両政府の思惑通りとはいかなかった。

 16日午後5時(日本時間17日午前6時)過ぎ、バイデン氏が先導する形でホワイトハウスの中庭に両首脳が現れ、左右に置かれた演壇の前に立った。

 ホスト役のバイデン氏はマスクを取ると、曇天から晴れ間がのぞいたことを受けて「首相が太陽を運んできた。彼は何でもできるんだよ」とジョークから入ったが、会場が沸いたような雰囲気はなかった。

 会談の焦点は対中国戦略であり、両首脳もそれぞれの立場から中国を意識して発言した。冒頭、バイデン氏は「我々は中国からの挑戦に共に立ち向かっていく」と、中国をいきなり名指しした。民主主義に対する専制主義の「挑戦」に対し、日米が手を携えて返り討ちにするという決意がにじんだ。

 一方、菅首相は中国の「威圧」に反対する姿勢を鮮明にしつつも「中国と率直な対話を行う必要もある」「国際関係における安定を追求すべきだ」と、融和的な姿勢を見せた。

 質疑に入ると雰囲気が一変した。日米双方のメディアが2問ずつ質問することになっていたが、最初に質問に立ったAP通信の記者が外交問題はそっちのけで、米国内の銃規制の本気度を問うたからだ。

 こうなると、菅首相や日本メディアは蚊帳の外であり、米国の内政モードに入ってしまう。バイデン氏も銃撃事件の頻発を「国家の恥だ」と繰り返し、「米国では毎日、毎日だ。大規模な銃撃事件が起きている。国家の恥であり、終わらせなければならない」と語気を強めた。

 初の対面による外国首脳との会談を終えた大統領に対し、それも会談相手の首脳が同席する中で、いきなり会談とは全く関係のない内政問題を質問するのは礼儀に反するとは思う。

 しかし、今回の会見で最も熱がこもっていたのは、バイデン氏が訴えかける「国家の恥」という言葉だった。米政府としては対中国のメッセージを発信したかったのだろうが、米メディアが会見の速報で焦点を当てたのは銃問題だった。

 一方、菅首相は初訪米の晴れ舞台でも、いきなり「アドリブ力の低さ」という弱点を露呈してしまった。

 3番目に質問したロイター通信の記者はバイデン氏に対イラン政策を質問した後、「首相にもお聞きしたい」として「公衆衛生の専門家も疑問視する中で、東京オリンピック・パラリンピックを開催する無責任さ」をただした。

 しかし、バイデン氏の答弁後に首相は答えるそぶりも見せず、最後の日本メディアの記者を指名した。

 五輪関連の質問が含まれていたため、「首相が五輪の質問を無視した」ということにはならなかった。しかし、自民党の二階俊博幹事長が大会「中止」の選択肢に言及し、国際社会でも改めて開催の行方が注目されていたタイミングで、逆に「新型コロナウイルス対策をどう進めて、どう五輪を開催するのか」をアピールする機会を生かせたかといえば、そうではなかった。

 せめてロイターの質問に臨機応変に答えていれば、五輪開催に関する印象も違っていただろうし、首相の存在感を国際的にも示せたように思う。【ワシントン秋山信一】


(毎日新聞)









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