社会

芸術家と顧客橋渡し 金沢の美術学生が会社起業 苦境の若手支援

アーティストと顧客をつなぐ会社を設立した秋山雅貴さん(右)と、龍ケ江輝介さん=金沢市内で2021年9月14日午後6時49分、菅沼舞撮影

 金沢の美術学生が、アートを求める人とアーティストをつなぐ会社を起業した。アート作品の売買・仲介は画廊(ギャラリー)が手がけるのが主流で、近年はギャラリーが扱わない美大生や若手の作品を売買するインターネットサイトも増えているが、同じアーティストの立場からきめ細やかなサポートができる強みを生かすことでアーティストを取り巻く環境の改善を目指す。【菅沼舞】

 金沢美術工芸大大学院修士2年の秋山雅貴さん(25)=金沢市=らが興した会社「aQ-studio」は、美大生やフリーのアーティストの作品を販売するほか、制作も請け負う。客は好みの所属アーティストを選び、同社が金額の交渉や契約を代行する。客とアーティストのマッチングも行う。美大生は無料で出品でき、売値の3割を仲介料として同社に支払う仕組みだ。

 油絵が専門の秋山さんも専属アーティストとして所属する。「どちらかというとビジネス志向」というものの起業は考えていなかったが、きっかけは昨年からのコロナ禍だった。アルバイトが減り、画材を買う費用にも事欠いた。展示やイベントも軒並み中止となり、作品を発表する場も失われた。周囲の学生も苦境にあえいでおり、支援金を募るため有志でクラウドファンディングを実施。出資者へのリターン(お礼)を学生の作品としたところ好評を博した。

 人物の顔をモチーフにした作品を手がける秋山さんは、これまでも写真共有アプリ「インスタグラム」で作品を公開し、制作依頼が舞い込むことも多かったことから、制作請負と仲介に商機があると考えた。ネット交流サービスを駆使すれば、個人でも仲介は可能だが「門構えが立派なら、依頼も集まりやすくなる」と起業を思い立ち、同級生で彫刻が専門の龍ケ江耀介さん(23)ら友人を誘って、資本金を出し合い今年、会社を設立した。

 「自分の絵の技術を仕事にしたかったので、ニーズに応じた制作は割り切れる」と秋山さん。一方、龍ケ江さんは、学生が授業で制作した作品が大学のゴミ捨て場に捨てられていることに心を痛めていた。「卒業制作は大型作品が多く、保管場所もない。せっかく一生懸命作ったのに、と残念だった。欲しい人はいるはずで、両者をつなぐものがあればと思った」と語る。

 2人はアートに親しむ層を広げることも目標に掲げる。裾野が広がれば制作から販売まで循環モデルを作ることができ、アートだけでは食べていくことが難しい美大生やアーティストの自立につながると期待を寄せている。


(毎日新聞)










  • お知らせ


  • 琉球新報デジタルサービス



  • 会員制サービス






  • 他のサービス