社会

吉本芸人仕込み 中学校、自作ネタ競う

吉本興業のお笑い芸人「ぺんぎんナッツ」(左2人)からネタ作りのアドバイスをもらう大熊中学校の生徒ら=福島県会津若松市一箕町の大熊町立大熊中学校仮校舎で2017年7月11日午後1時41分、湯浅聖一撮影

 ◇18日に「O−1グランプリ」を避難先の仮校舎で開催

 東京電力福島第1原発が立地し、事故で全域が避難指示区域になっている福島県大熊町の町立大熊中学校で、吉本興業のお笑い芸人からネタ作りを教わる「漫才講座」が続いている。長引く避難生活で疲れた子供たちの心を癒やそうと、町が今年度から小・中学校で始めた「笑い」を取り入れた授業の一環。18日には町名にちなんだ「O−1グランプリ」を避難先の仮校舎で開き、自作ネタの出来栄えを競い合う。

 海沿いの大熊町から西に約100キロ離れた同県会津若松市にあるプレハブの仮校舎。全生徒19人が11日、開講3回目の授業に臨み、吉本のお笑いコンビ「ぺんぎんナッツ」が、これまで練ってきたネタをチェックした。

 「ウケたボケはもう1回入れてみようか。笑いが増幅する」「見ている人に伝わるように身ぶり手ぶりを交えて」と声が飛ぶ。コンビは吉本が地域貢献のため、各地に居住させる「住みます芸人」で、2人とも同県郡山市に住む。ツッコミ担当の中村陽介さん(34)は「発想に柔軟性があり、クオリティーが高い」と驚いた。

 発案したのは町教育長の武内敏英さん(73)。「支援や大人の期待に応えようと頑張り過ぎ、疲れている子が多い」という保護者らの声がきっかけだ。

 武内さんは大熊中校長を最後に退職した元教諭。対応を検討する中で、笑いを取ると授業がスムーズに進んだ経験や、笑いの健康効果に関する本を思い出した。

 総合学習の時間を利用し、5月にはまず上方落語家の桂雀太さん(40)を招き、扇子を使ってそばをすする仕草などを学んだ。6月からの漫才講座では、生徒らは2〜3人1組で、間の抜けたコンビニ店員と客との滑稽(こっけい)な掛け合いや、新婚夫婦を題材にした言葉遊びなどのネタを自作してきた。2年生の半杭(はんぐい)真奈さん(14)は「自分から話す性格ではなく、最初はツッコミ方も分からず嫌だったけれど、笑ってもらえるから楽しくなった」と本番に向け、ツッコミの練度を上げてきた。

 武内さんの指導方針は、人の欠点をつく笑いではなく、前向きな人間関係を築く笑い。「子供たちの表情も変わってきた。元気と活力を取り戻すことが、復興を遂げる力になる」。グランプリには8組が出場予定だ。【湯浅聖一】


(毎日新聞)