経済

「当面値下げしません」は「従業員>消費者」?

九州電力の電気料金や従業員待遇などを巡る主な経緯

 ◇川内と玄海原発、再稼働しても…… 消費者から反発の声も

 原子力規制委員会による九州電力玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)の再稼働審査が最終盤を迎えている。ところが九電は、川内(せんだい)原発(鹿児島県薩摩川内市)に次いで玄海原発が再稼働しても、2011年の福島原発事故後に値上げした電気料金を当面は下げない方針だ。従業員給与や役員報酬は事故前の水準に戻しつつあり、値下げを後回しにする姿勢に消費者から反発の声も上がっている。

 「電気料金の値下げよりも従業員の待遇改善を優先するのはおかしい。電力小売りが全面自由化されても独占企業の体質が変わっていない」。九電が13年に値上げした際、経済産業省が開いた公聴会で意見陳述した福岡県太宰府市の自営業、入江亮さん(48)は批判する。

 原発依存度が高い九電は、福島の事故後の原発停止で経営が悪化し、13年5月に平均6・23%(家庭向け)の値上げに踏み切った。ただ15年8月には全国のトップを切って川内原発が再稼働し、今冬以降に玄海原発の再稼働も見込む。15年度には黒字に戻った。それでも九電は、今年6月に発表した21年度までの経営計画で、この間の値下げに否定的な見解を示した。

 九電は値上げ後の現在の電気料金について「玄海原発が再稼働することを前提に設定した」と説明。11年度から4年連続で大幅な赤字が続いたことや、2度値上げした関西電力と違って再値上げしなかったことなどを強調し、理解を求める。

 だが一方で、原発事故後にカットした従業員や役員の待遇の見直しには一足早く着手している。11年度の833万円から13年度に570万円まで下がった従業員平均給与は、16年度に757万円まで増えた。16年度の取締役1人当たりの役員報酬平均額も前年度比83%増の2760万円。瓜生道明社長は「苦しい時代に重責に取り組んでくれた」と話す。株主への配当も15年度に復活した。

 立命館大の金森絵里教授(会計学)は「電気料金の値下げが必要でないか国が確認する仕組みがなく、営利企業としては仕方がない面もある。ただ電力会社は公益事業者で、電気料金の値下げを優先すべきだ」と指摘する。【遠山和宏】

 ◇九州電力の電気料金や従業員待遇などを巡る主な経緯

2011年 3月 東京電力福島第1原発事故が発生

  13年 3月 基準内賃金平均5%の削減で労組と妥結

      4月 企業向け電気料金を平均11・94%値上げ

        役員報酬の削減率を平均60%に

      5月 家庭向け電気料金を平均6.23%値上げ

  15年 8月 川内原発1号機が再稼働

  16年 3月 4年ぶりの賞与復活で労組と妥結

      4月 4年ぶりの配当復活を決定

      7月 役員報酬の削減率を平均30%に半減

  17年 1月 玄海原発3、4号機が「再稼働審査」合格

      6月 21年度までの値下げに否定的見解示す

 ◇九電以外の大手電力も、一度下げた従業員給与を戻しつつ…

 九電以外の大手電力も、一度下げた従業員の給与を戻しつつある。中部電力は14年5月に上げた電気料金を据え置いたままだ。一方、10年度の834万円から14年度に680万円まで下がった平均年間給与は、16年度に765万円に増えた。

 原発事故後に2度、電気料金を値上げした関西電力は、今年8月値下げに踏み切ったが、最初の値上げ前より高いままだ。この間、平均給与は10年度の806万円から14年度に588万円まで下がったが、16年度は681万円まで上昇した。10年度に761万円だった東京電力も12年度に619万円まで下がったが、15年度は733万円まで回復した。


(毎日新聞)