政治

首相「全て」発言で混乱 政府・与党調整難航

幼児教育無償化の対象を巡る政府・与党の綱引き

 安倍晋三首相が掲げる「幼児教育・保育の無償化」を巡り、対象をどこまで広げるかについて政府・与党内の調整が難航している。首相は衆院選で「3〜5歳の全ての子供を無償化」とぶち上げたが、与党は財源への懸念から「高額所得者に助成の上限を設ける」などの案を現実的とみる。首相の「独走」が調整を難しくしており、20日の代表質問でも野党から着地点をただす質問が相次いだ。【阿部亮介、小田中大】

 「無償化はウソではないか。特に認可外は無償になるのか」。希望の党の玉木雄一郎代表は20日、衆院本会議の代表質問で追及した。首相は17日の所信表明演説でも「3〜5歳の全ての子供たちの幼稚園や保育園の費用を無償化する」と繰り返したが、政府・与党内では「認可外の利用者は月額2万5700円を上限に支給」などの案が有力だからだ。

 立憲民主党の枝野幸男代表も「所信表明の『全て』というのは、限定や差異なく無償化するとしか受け取れない」と述べ、政府内の矛盾点を指摘。首相は「具体的な検討を進めているところだ」と返すしかなかった。

 政府・与党の制度設計は迷走を重ねてきた。自民党は衆院選公約で「全て無償化」などと明記した。だが、財源や保育の質を懸念する財務省や厚生労働省は「認可外保育施設は対象外」と検討。一方で、「本当に困っているのは認可外の利用者だ」などと世論の批判が上がり、自民党も「認可外も対象にすべきだ」などと政府側に迫った。

 与党関係者は「首相官邸は認可外を含めるかどうかについて何も考えていなかったのだろう」と述べ、選挙目当てで「見切り発車」した官邸への不満を漏らす。自民党幹部も「首相が『全て』と言ったので、どれだけ政府・与党で汗をかいて、対象の線引きに頑張っていることを世の中にみせるか、ということだ」と指摘する。

 自民党は22日、「認可、認可外を問わず助成の上限を設けるなど、高額所得者に対し『金持ち優遇』にならないようにすべきだ」などとした提言案をまとめる。政府側にとっては、公約を現実路線に落ち着ける「助け舟」で、今後は提言に沿った制度設計の詰めの作業を急ぐ方針だ。


(毎日新聞)