社会

AADC欠損症患者と医師10年の歩み追う

(右から)難病「AADC欠損症」と闘う松林佳汰さん、亜美さん兄妹。治療に光が差したことを喜ぶ長女紗希さん(左)=タキオンジャパン提供

 生まれつき運動神経をつかさどる酵素を持たない難病「AADC(芳香族L−アミノ酸脱炭酸酵素)欠損症」患者と、日本初の遺伝子治療に挑んだ医師の姿を追った映画「奇跡の子どもたち」が14日、JR西国分寺駅近くの東京都立多摩図書館セミナールーム(国分寺市)で特別上映される。映像プロデューサーの稲塚秀孝さんが「難病に苦しむ子に希望を見いだしてほしい」と約10年間追いかけたドキュメンタリーだ。【中澤雄大/統合デジタル取材センター】

 ◇世界でも患者が少ない難病……遺伝子治療で症状改善も

 映画制作のきっかけは11年前、都内在住のライター、山田直樹さんから「脳性まひとされていた息子の病名がようやく分かったよ」と連絡を受けたことだった。寝たきり状態の長男慧さん(当時10歳)が、世界でも患者が少ないAADC欠損症と診察されたのだ。当時国内の患者は慧さん以外に山形県の松林佳汰さん(同7歳)、亜美さん(同4歳)の兄妹だけだった。

 稲塚さんはこれまで広島と長崎の被爆者を描いた「二重被爆〜語り部 山口彊(つとむ)」などのドキュメンタリーを多く手掛けた経験から「映画化すれば、病名が分からずにいる患者の治療にも光が差すかもしれない」と取材を始めた。

 当時、希少な病のため、医療界でも病気そのものが知られておらず、診断も困難を極めた。寝たきりのまま成長する子どもたちを懸命に支える家族、医療スタッフの姿を記録し続けた。やがてパーキンソン病の遺伝子治療薬が効きそうだと分かり、3人は脳に薬を注入する手術を受ける。歩行器を使って移動できるまで回復した亜美さんらの笑顔は、涙なしでは見られないほど感動的だ。

 ◇テレビ版は「日本放送文化大賞」準グランプリ受賞し、全国ネットで放送

 山形テレビと共に制作したテレビ版は昨年11月、放送文化の向上に貢献した番組を表彰する「日本放送文化大賞」準グランプリに選ばれ、年末年始にかけて全国ネットで放送された。映画は昨年6月から順次公開されている。

 AADC欠損症は昨年4月に国の難病指定を受け、その後新たに2人が手術を受けた。稲塚さんは「遺伝子治療は他の小児神経症にも汎用(はんよう)性を持つ可能性があるそうです。映画を通じて、この病気が認知されるためにも、多くの方々に見てほしい」と話す。

 当日は午後1時半から上映(80分)。AADC欠損症などに詳しい昭和大医学部小児科学講座の加藤光広准教授と小児神経伝達物質病家族会事務局の山田章子さんのトークセッションもある。参加費=大人1000円▽学生500円。問い合わせはタキオンジャパン(090・3576・6644)。


(毎日新聞)