社会

近赤外線で治療 がんセンター3月から治験へ

 近赤外光を使ってがんを治療する「がん光免疫療法」の国内初の治験(臨床試験)が、国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)で3月に始まることが決まった。再発頭頸(とうけい)部がん患者を対象に実施する。同療法の実用化を目指す米製薬ベンチャー「アスピリアン・セラピューティクス社」が13日にも発表する。同療法は、米国立衛生研究所(NIH)の小林久隆主任研究員が開発した。

 がん細胞表面のたんぱく質に結びつく「抗体」に、近赤外光によって反応を起こす化学物質を付着させ、患者に注射。患部に近赤外光を当てると化学物質が反応し、がん細胞の細胞膜を傷つけて死滅させる。

 近赤外光はテレビのリモコンに使われ、人体には無害。がん細胞だけを狙って攻撃できるため副作用が少なく、手術や抗がん剤などで治らない進行がん患者の新たな治療の選択肢として注目されている。

 治験は、米国で2015年に始まった。従来の治療で治らず再発した舌がん、咽頭(いんとう)がんなど頭頸部がん患者を対象に実施した結果、安全性が確認され、効果を調べる段階に進んでいる。公表データによると計15人の患者のうち14人のがんが縮小し、そのうち7人はがんが消失したという。残る1人もがんは悪化していない。

 ア社は昨年12月、厚生労働相に米国と同様に頭頸部がんを対象とした治験計画を届け出た。今後、倫理審査委員会を経て、安全性を確認するため少人数の患者に実施する。がん研究センター東病院の土井俊彦副院長は「光免疫療法は他のがんへの応用も含め、さまざまな治療の可能性が考えられる。患者が海外で治験を受けることは難しく、国内での承認に向けた治験実施は重要な意味を持つ」と話す。【永山悦子】

 小林久隆・NIH主任研究員の話 この治療法の論文を11年末に発表してから約6年で、日本で治験が始まることになった。少しでも早い実施が患者の皆さんの役に立つと理解していたので、ようやくここまでたどりついたという思いだ。


(毎日新聞)