社会

故郷・神戸に母の叫び届け ミュージカル参加

ミュージカルの練習に取り組む橋本陽子さん(中央左側)=兵庫県芦屋市で2018年1月8日、田辺佑介撮影

 阪神大震災の後、各地で公演を続ける兵庫県芦屋市の「奇跡の街合唱団」が14日、東日本大震災で苦悩する猫の母子のミュージカル「Cats in KOBE」を上演する。母猫役の橋本陽子さん(45)は、実際に東京電力福島第1原発事故に遭い神戸市の実家に自主避難。「阪神」と異なる被災者の気持ちに気づいてもらえたら−−。震災から23年のあの日を前に、自らの境遇を重ね舞台に上がる。

 橋本さんは阪神大震災当時、京都市内の大学に在学中で家族もけがはなかった。翌年結婚して夫の故郷の茨城県に住み、1999年に同県東海村にある核燃料加工会社の臨界事故で屋内退避した。

 東日本大震災の17日後に長女小春さん(6)を出産した。茨城県は原発事故による避難指示区域は設定されなかったが、福島県は隣県。放射能への懸念が頭から離れなかった。

 2011年6月、小学生の息子2人と長女を連れ親戚のいる京都に避難し13年に実家に移った。夫も神戸で仕事を見つけ同居する。

 「合唱団」は東北や熊本の震災被災地で復興支援のため公演している。橋本さんは自主避難者らの集まりに参加するうちに合唱団を知り練習に参加。主宰者が橋本さんの被災体験を知り「子猫を別の町に避難させたミュージカルで母猫役をやらないか」と声をかけた。

 橋本さんは京都や神戸で「いつ帰るの」「支援があっていいね」と言われたことがある。「『阪神』を経験した関西でも、放射能への不安は地震による被災ほど理解されない。温度差をなくすには自分が演じるのが一番」と出演を決めた。「あの日、とにかく子供たちだけでも逃がそうとしたのです」。母猫の叫びが届くことを願う。公演は14日午後3時から芦屋市業平町の市民センター・ルナホール(午後2時半開場)。問い合わせは村嶋さん(0797・22・9438)。【田辺佑介】


(毎日新聞)