社会

第4次産業革命と少子高齢化 日本再生の切り札は

講演する小尾敏夫早稲田大学教授=東京都新宿区で2018年3月6日、岡礼子撮影

 人工知能(AI)などの技術革新が社会に大きな変革をもたらすという「第4次産業革命」をテーマに、今後の日本社会のあり方を考えるシンポジウム「日本の未来像」(早稲田大学電子政府・自治体研究所など共催、毎日新聞社など後援)が6日、早稲田大学大隈講堂(東京都新宿区)で開催された。

 シンポジウムは、まず、情報通信分野を幅広く研究し、国連国際電気通信連合(ITU)事務総長特別代表など要職も務めた小尾敏夫・早稲田大学教授が基調講演。続いて、第4次産業革命が国内産業に与える影響を考える「IoT・AI・イノベーション新未来を語る」、少子高齢化が進む日本再生の道を探る「日本の未来−少子高齢化人口減少社会を語る」という二つのパネルディスカッションが行われた。パネルディスカッションの第1部は、元日本HPファイナンシャルサービス社長の吉田雅彦氏、第2部は朝比奈豊・毎日新聞社会長がモデレーターを務めた。

 ◇進むか「脳業革命」 新技術がヒトの五感を「拡張」

 第1部は、前宇宙航空研究開発機構(JAXA)理事長の立川敬二氏、NTTデータ社長を務めた山下徹氏、沖電気工業会長の川崎秀一氏らが参加した。

 山下氏は、第4次産業革命は「『脳業』革命だ」と指摘。第4次は、これまでの産業革命とは異なり、人間の脳や目、耳など「五感」に関わる部分、具体的には、センサーによる「知覚」や、音声による機器操作などにおける技術革新が進むと予想。「安心で便利な生活ができるようになるのではないか」と期待を述べた。

 また、立川氏は、AIについて、単に従来業務の効率を上げるのではなく、例えば、医療や介護など新たな分野にも適用し、「認知症の治療にVR(バーチャルリアリティー=仮想現実)を使うといった活用法を研究してはどうか」と述べた。総務省の鈴木茂樹総務審議官は「社会構造を変えていくことが求められる。人手不足の農業は、AIで大規模化して安全な食を世界に売りだしては」などと提案した。

 一方で、山下氏は、格差の拡大や管理社会の出現などAIの浸透に伴って懸念される点を挙げた上で、40〜50代向けのリカレント(社会人の学び直し)教育の拡充、創造的な人材が活躍しやすい社会構造の創出、革命に対応する法整備の3点を提言した。

 川崎氏は、従来の日本の情報通信機器産業は、自社の技術にこだわる「自前主義」に陥りがちで、市場ニーズをつかむマーケティング面は弱く、新たなビジネスモデルを創造しようとする姿勢で海外勢に遅れを取っていたと指摘した。その上で、今後は、IoT(モノのインターネット)やビッグデータ、ディープラーニング(深層学習)など、最先端の技術を活用してモノづくり改革を進めることが必要だと強調した。

 ◇女性活用、開かれた国、イノベーション...さまざまな処方箋

 第2部は、元厚生労働省局長で資生堂副社長も務めた岩田喜美枝氏、東京ガス会長の岡本毅氏、JR東日本会長の清野智氏、大和証券会長を務めた鈴木茂晴氏、トヨタ自動車副会長の早川茂氏、ライオン会長を務めた藤重貞慶氏が参加、労働人口の減少が進む日本の経済や社会を再び活性化させる「切り札」について話し合った。

 岩田氏は、女性や外国人の活躍が日本再生のカギになると強調。また、少子化のスピードを緩めるため、結婚しにくい、子供を持ちにくい原因の一つとなっている正社員の長時間労働、非正規雇用の増加を解消することを訴えた。

 岡本氏は、人口減少社会で、さまざまな生活インフラを全国まんべんなく維持することは難しくなると指摘。都市機能や居住地域を集約する「コンパクトシティー」の可能性を探ったり、分散型電源を活用するシステムに移行したりすることを提案した。

 清野氏は、外国人に対して心を開く受け入れ体制を整えるなどして「観光立国」化を進めるとともに、「モノづくり」を大切にする国というあり方をもう一度確認し、技術系の高校や大学の再編を進めるべきだとした。

 鈴木氏は、労働生産性を高めるために、長時間労働をさせるのではなく、1人当たりの労働負担を減少させるような「イノベーション」が重要な役割を果たすと指摘。働き手が健康で高いモチベーションを持てることが必要だとした。

 早川氏は、高い技術力、開かれた国づくりと、国力に応じた国際貢献をベースに、保護主義の台頭を抑えていくことが重要であるとした。外国人材の受け入れについては、単に労働力の不足を補うという観点ではなく、外国人が日本に行ってみたい、日本で働いてみたいと思うような国にすることが大事だと強調した。

 藤重氏は、日本は、社会のニーズを解決するためのイノベーションを行い、現在の社会制度を抜本改革することが必要だと指摘。改革の方向性を示すキーワードとして、シェアリング(共有)、「所有から利用へ」、「購入から課金制へ」、AI・ロボット、キャッシュレス−−などを挙げた。また、大学や企業、金融機関、自治体が緊密に連携し、国際競争力のある知的財産を継続的に作り出していくことが必要と強調した。

 ◇シンポジウムの出席者

第1部 モデレーター:吉田雅彦・国際競争力会議代表、パネリスト:川崎秀一・沖電気工業会長▽鈴木茂樹・総務審議官▽立川敬二・前宇宙航空研究開発機構(JAXA)理事長▽山際大志郎・元副経済産業相▽山下徹・前NTTデータ社長

第2部 モデレーター:朝比奈豊・毎日新聞社会長、パネリスト:岩田喜美枝・元資生堂副社長▽岡本毅・東京ガス会長▽清野智・JR東日本会長▽鈴木茂晴・前大和証券会長▽早川茂・トヨタ自動車副会長▽藤重貞慶・前ライオン会長


(毎日新聞)