社会

最高賞に「奇跡の子どもたち」

(右から)難病「AADC欠損症」と闘う松林佳汰さん、亜美さん兄妹。治療に光が差したことを喜ぶ長女紗希さん(左)=タキオンジャパン提供

 ◇ファーウェイ賞とのダブル受賞

 優れた科学技術映像に贈られる第59回科学技術映像祭(日本科学技術振興財団など主催、日本新聞協会など後援)の入賞作品が決まり、最高賞の内閣総理大臣賞に映画「奇跡の子どもたち」(企画製作・タキオンジャパン)が選ばれた。稲塚秀孝監督が「難病に苦しむ子に希望を見いだしてほしい」と、寝たきりの希少難病「AADC欠損症(芳香族L−アミノ酸脱炭酸酵素欠損症)」の患者・家族と、日本初の遺伝子治療に挑んだ医師の姿を10年間追い続けたドキュメンタリーだ。

 今回、特別協賛する華為技術日本(ファーウェイ・ジャパン)のファーウェイ賞とのダブル受賞となった。山形テレビと共同制作したテレビ版が昨年11月、放送文化の向上に貢献した番組を表彰する「日本放送文化大賞」準グランプリに選ばれたばかりで、稲塚監督は「これまでの受賞を通じて、少しでもこの病気が認知されるように多くの方々に見てほしい」と話す。授賞式は4月20日、東京・北の丸公園の科学技術館で開かれる。【中澤雄大/統合デジタル取材センター】

 ◇希少難病「AADC欠損症」……「この病気を知ってほしい」

 「息子の病名がようやく分かったよ」−−。製作のきっかけは11年前、知人で都内在住のライターの山田直樹さんから連絡を受けたことだった。寝たきり状態の長男慧(さとし)さん(当時10歳)が、世界でも患者が少ないAADC欠損症と診察されたのだ。当時国内の患者は慧さん以外に山形県の松林佳汰さん(同7歳)、亜美さん(同4歳)の兄妹だけだった。

 稲塚監督はこれまで広島と長崎の被爆者を描いた「二重被爆〜語り部 山口彊(つとむ)の遺言」など数々の社会派作品を手掛けた経験から「映画化すれば、病名が分からずにいる患者の治療にも光が差すかもしれない」と思い、全く未知であった医療界を手探りで取材を始めた。

 ◇外国の子どもたちも治療のため来日

 当時、希少な病のため、医療界でも病気そのものが知られておらず、診断も困難を極めた。寝たきりのまま成長する子どもたちを懸命に支える2家族、医療スタッフの姿を記録し続けた。ようやくパーキンソン病の遺伝子治療薬が効きそうだと分かり、3人は脳に薬を注入する手術を受けることを決意した。その結果、歩行器を使って移動できるまで病状が回復した亜美さんらの笑顔はとても感動的だ。

 映画製作と並行して、昨年4月に国の難病指定を受け、その後新たに2人が手術を受けた。遺伝子治療は他の小児神経症にも汎用(はんよう)性を持つ可能性があるとされる。オーストラリアやロシアの患者も治療を受けるために来日している。

 授賞式当日には稲塚監督と昭和大の加藤光広医師が社会と科学技術の接点などについて話し合うトークセッションもある。問い合わせは同映像祭事務局(03・3212・8487)。


(毎日新聞)