社会

阪神被災の元教諭、福島の卒業式へ 生徒と交流

小橋誠也さん(右)ら卒業生と握手する牧秀一さん(左)=福島県三春町で2018年3月13日午後0時19分、井上元宏撮影

 東京電力福島第1原発事故のため、村外で授業を続けてきた福島県葛尾村立葛尾中の卒業式が13日、同県三春町の仮設校舎であった。阪神大震災の被災者支援を続ける神戸市のNPO「よろず相談室」理事長の牧秀一さん(68)が招かれた。牧さんは昨夏に被災体験を話したことを機に生徒と交流。「大空のように明るく育って」と青色のシャープペンシルを贈った。

 葛尾村は2011年3月の原発事故で全村避難となった。村は13年に約20キロ西に離れた三春町内に仮設校舎を設置し、現在は15人が在籍している。避難指示の解除で今年4月から村内で授業を再開できることになり、今回が仮設校舎での最後の卒業式となった。

 葛尾中の生徒は昨年6月に修学旅行で関西を訪れ、牧さんの講演を聴いた。牧さんは1995年の阪神大震災の時、定時制高校の教諭。家が全焼したのに涙を見せず通学する教え子さえいた。葛尾中の生徒と会い「阪神の子どもたちと重なった」と牧さん。講演では「頑張り過ぎない」「悩みを語り合う」などと助言した。後日、生徒からお礼の手紙が届いた。「『頑張り過ぎない』が心に残った」と書かれていた。クリスマスカードを送るなど交流を続けた。

 式の前日に葛尾中を訪れた牧さんと生徒の間でこんなやり取りがあった。「神戸はケーキのおいしい街やで」「チョコ?モンブラン?」。目を輝かせたのはパティシエ志望の小橋誠也さん(15)だ。

 小橋さんは原発事故後、避難所を転々とした。両親は仕事で宮城県に移ったが、「友達と離れたくない」と祖父母の家から仮設校舎に通った。春から宮城県内の高校に入学する。「震災の悩みを話し、相手を傷つけることが怖い時もあった。牧さんの『悩みを独りで抱えないように』という言葉が胸に響いた」

 卒業式で生徒は自作の歌を合唱した。「離れるのは不安だけど」「この思い出がある限りきっと大丈夫」。じっと聴き入り、涙を浮かべた牧さん。「心はそばにいる。しんどくなったら、神戸においで」【井上元宏】


(毎日新聞)