社会

看護師受け入れ10年 国家試験合格者が低迷

患者に声を掛けるリッキー・ラスマ・ヌルシア・シレガルさん=香川県坂出市で、岩崎邦宏撮影

 経済連携協定(EPA)に基づいて来日し、働きながら看護師の国家資格を取得した外国人の人数が香川県内で低迷している。制度が始まって今年で10年だが、言語が壁となり、合格者は1人にとどまっている。将来的に看護師の人手不足が懸念され、県は受け入れを増やしたい考えだ。【岩崎邦宏】

 EPAに基づく看護師候補者の受け入れは2008年度に始まり、現地での実務経験などがある、インドネシア▽フィリピン▽ベトナムの3カ国が対象。日本の国家試験に合格すればそのまま就労できるが、3年以内に合格できないと帰国しなければならない。国家試験で一定の成績を残すなどの条件を満たせば滞在期間を1年延長できる。

 厚生労働省によると、全国で17年度までの10年間に1203人の看護師候補者を受け入れた。一方、国家試験の合格率は08〜11年度で0〜11.3%に低迷。同省は12年度の試験から漢字にルビを振り、試験時間を日本人の1.3倍に延ばす対策を取り、17年度は17.7%まで伸びたが、全体の合格率(例年約9割)とは大きな開きがある。

 県医務国保課によると、県内の病院などでは09〜17年度に6人を受け入れ、現在は1人が働きながら国家試験の合格を目指している。6人のうちインドネシア国籍の1人が11年度に国家試験に合格したが、既に帰国したという。受け入れが増えないのは、研修や学習支援などの面で病院側の負担も大きいことが理由とみられる。

 一方、県看護協会が今年7月、県内の全89病院を対象に看護師の不足感を調べたところ、回答した83病院の53%が「不足感がある」「やや不足感がある」と答え、人手不足が広がっていることがうかがえる。

 浜田恵造知事は10月の県議会一般質問で、EPAに基づく看護人材の受け入れについて「今後も受け入れ施設を通じた学習支援を行うなどEPAを活用した人材確保に積極的に取り組んでいく」と述べた。

 ◇インドネシア人の女性「日本で働きたい」

 坂出市加茂町の「こころの医療センター五色台」に勤めるインドネシア人の女性は、来年2月にある看護師の国家試験に向けて勉強を続けている。

 「どうかしましたか」。10月下旬、リッキー・ラスマ・ヌルシア・シレガルさん(33)が、ベッドで横になっていた女性患者に流ちょうな日本語で声を掛けた。医師や看護師の補助をしながら、業務の合間や休日に日本語と国家試験の学習に打ち込む。

 母国で5年間、看護師として働いていたが、家族の生活を支えようと2015年6月に来日。給料から月に3、4万円を仕送りしているという。病院では病棟のシーツ交換や入浴介助をこなしつつ、先輩看護師に勉強を教わる。今年3月には准看護師の資格を得て仕事の幅も広がった。看護師長の入倉佐也加さん(39)は「性格が明るく、1人でできる仕事も増えて戦力になっている」と話す。

 国家試験は来年で4回目の挑戦で、経済連携協定(EPA)に基づく受け入れでは最後のチャンスとなる。「日本は看護の知識が深く、単語が難しい」と、試験へのプレッシャーを感じているシレガルさんだが、「合格して日本で働き続けたい」と意気込んでいる。


(毎日新聞)