社会

鉛筆一本で数々の事件解決 スゴ腕「似顔絵師」が弟子育成 群馬県警の緑川順さん 

中沢尊幸さん(右)が頭蓋骨の形から復元した顔を見て、アドバイスする群馬県警科学捜査研究所の緑川順さん=前橋市江田町で、2019年4月15日午後5時18分、神内亜実撮影

 現場に残された遺体、犯人の目撃情報――。わずかな手掛かりから「顔」を復元する「似顔絵」捜査で、群馬県警科学捜査研究所(科捜研)に、鉛筆一本で数々の事件を解決に導いてきた“スゴ腕似顔絵師”がいる。緑川順さん(60)。今春定年退職を迎えたが、その技を伝承するために再任用され、“弟子”入りした芸大出身の異色の経歴を持つ若手警察官の指導に力を注いでいる。

 緑川さんは1977年に県警入り。交番勤務などを経て88年から科捜研の法医係にいる。独学で学んだ解剖学の知識を基に、身元不明遺体の頭蓋骨(ずがいこつ)の形状から生前の顔を復元する「復顔」や、目撃者の証言や古い写真から容疑者を描く「捜査用似顔絵」を担当している。

 これまで手がけた似顔絵は200近くになる。依頼は県内だけではない。松山市で1982年に起きたホステス殺人事件では、96年に愛媛県警の依頼を受け、指名手配された福田和子元受刑者の似顔絵を作成。10年前の写真を基にしわなどの「歳月」を加えて完成させ、時効成立まで残り3週間での逮捕につなげた。警察庁指定の「広域技能指導官」として、全国の警察で似顔絵の講師もしてきた。

 その緑川さんの下で今修業を積んでいるのが、2015年に群馬県警に採用された中沢尊幸(たかゆき)さん(29)。名門、東京芸術大の彫刻科を卒業し、警察官の父親の勧めで県警に入った。その素質に目を付けた緑川さんに“後継”指名された。

 情報通信技術(ICT)の発達で防犯カメラの映像解析など法医係に求められる仕事は増えているが、写真よりも顔の特徴が強調され、人の印象に残る似顔絵は、今も重要な捜査手法だ。「緑川さんの後継者ということでプレッシャーもあるが期待に応えたい」と意気込む弟子に、師匠は「デッサン力、形を見る目も申し分ない。育成に力を注ぎたい」と期待をかけている。【神内亜実】


(毎日新聞)