社会

「車の怖さ、運転手は想像を」13年前の園児事故 5歳長女亡くした父が訴え 埼玉・川口

福地禎明さん=さいたま市で、中川友希撮影

 埼玉県川口市で2006年、保育園児の列に車が突っ込み、園児4人が死亡する事故があった。当時5歳だった長女の悠月(ゆづき)ちゃんを失った福地禎明さん(50)は事故が繰り返される現状を受けて取材に応じ、「車は銃のように破壊力があり、大勢の人が一度に亡くなる。運転手はその怖さを想像してほしい」と訴える。

 事故が起きたのは06年9月25日。生活道路の市道でワゴン車が散歩中の保育園児の列に突っ込み、悠月ちゃんら4人が死亡、17人が重軽傷を負った。運転していた男が助手席の音楽プレーヤーを操作して前を見ず、車が通り過ぎるのを待っていた園児の列に気付くのが遅れたことが原因だった。男は業務上過失致死傷罪に問われ、懲役5年の実刑判決を受けている。

 禎明さんは他の遺族らとともに業務上過失致死傷罪の法定刑引き上げを求める署名を法務省に提出するなど、交通事故の厳罰化を求めて活動を続けた。だが、悪質な運転はなくならず、厳罰化も思うように進まない現状にむなしさを感じ、ここ10年ほどは表立った活動を控えていたという。

 大津市で今月8日、保育園児の列に車が突っ込んだ事故はテレビで知った。「いつかまた起きるだろうと思っていたことが起きてしまった」と感じた。

 悠月ちゃんはおしゃべりが大好きでにぎやかな子だった。「人が大好きで誰にでも話しかけていた。大きくなったらどんな子になっていたか」。妻や長男(20)と事故について話すことはないが、ショックは13年たっても変わらず「自分だけが置き去りにされるような感覚」という。

 悠月ちゃんの事故を受け、川口市が現場周辺の生活道路に時速30キロの速度規制をかけた緊急対策はのちに「ゾーン30」と呼ばれる交通規制として全国に広まる成果もあった。

 それでも禎明さんは運転者の意識を変える必要性を改めて感じている。「ゆづ(悠月ちゃん)の事故も大津の事故も、真剣に注意して運転していれば防げたのでは。社会全体で事故を許さない雰囲気を作ることが必要だ」と話した。【中川友希】


(毎日新聞)