社会

吉本、「死亡でも免責」規約に同意求める 「NSC」合宿参加の生徒から

吉本興業

 吉本興業が、芸人養成所「NSC」の合宿に参加する生徒に対し、合宿中の死亡や負傷について原因に関係なく吉本興業を免責し、賠償請求権も認めないとする規約に同意するよう求めていたことが31日、明らかになった。同社によると、顧問弁護士の指摘を受け5年前に内容を見直したが、その後担当者が代わり、誤って古い内容の規約を配布してしまったという。識者からは「責任逃れの誓約書で、『芸人ファースト』の実態が伴っていない」との批判が出ている。

 NSCは吉本の養成所で、東京や大阪など全国7カ所にある。合宿は今年9月に各校から希望者が参加して実施される予定で、参加希望者には規約に同意する誓約書の提出を義務づけている。吉本興業によると、「規約及び注意事項」には15項目の順守事項が含まれ、その中に「合宿中、負傷した場合、またこれらに基づいた後遺症が発生した場合、あるいは死亡した場合においても、その原因のいかんを問わず吉本興業株式会社に対する責任の一切は免除されるものとする」と記されていた。

 さらに「今回の合宿で起きた傷害についての吉本興業株式会社に対する賠償請求、訴訟の提起などの支払い請求は行えないものとする」とも記載していた。消費者契約法では、事業者の損害賠償責任の全部を免除する条項や、事業者の故意や重過失による場合に一部免責する条項は無効としている。

 芸能人の権利を守る「日本エンターテイナーライツ協会」共同代表理事の佐藤大和弁護士は「本来、芸能人と芸能事務所は対等であるべきだが、この誓約書の内容は『主従関係』。海外からも指摘されている(芸人の)奴隷扱いだ。民法90条に記されている公序良俗に反し、無効になる可能性がある。吉本興業側は、NSCの合宿参加者を萎縮させる効果を狙ったと疑われかねない」と指摘する。

 この規約の配布開始時期について同社は不明としているが、2009年に大崎洋社長(現ホールディングス会長)が就任した際に打ち出した、コンプライアンス(法令順守)やリスク管理の強化策の一環として文書が作成されたとみられるという。その後、顧問弁護士から内容が不適切との指摘を受け、14年に「責任の一切は免除される」とした条項を修正。16年までは修正後の規約を配布したが、17年に担当者が代わって以降は、誤って修正以前のものを配布していたという。吉本興業は「生徒と親御さんに与えた不信感を払拭(ふっしょく)したい」として、順次、参加希望者に新たな規約を配布しているという。【山田夢留、井上知大】


(毎日新聞)









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