社会

伸びる新幹線の「鼻」 速度アップより騒音の抑制

次世代新幹線の試験車両「ALFA-X」=JR盛岡駅で、和田大典撮影

 新幹線の「鼻」が、時代を越えて伸びている。東北新幹線で試験走行が続く試験車両「ALFA―X(アルファエックス)」の先頭車両(1号車)の先端部分は22メートルに及び、全長26・25メートルの8割を超える。「団子鼻」の愛称を持つ初代「0系」が1964(昭和39)年に登場してから半世紀あまり。令和を走る試験車両はシャープなシルエットでスピード感にあふれる。ただし、その最大のミッションは速度アップではなく騒音の抑制にある。

 JR東日本は5月からALFA―Xの試験走行を始め、2022年3月まで継続する。営業運転として最高時速360キロ、試験段階では400キロに挑む。それでも、JR東の浅野浩二・先端鉄道システム開発センター所長は「スピードは最重要ではない」と言う。同社は93年に別の試験車両で時速425キロを既に記録。今回の試験では、鼻が16メートルのALFA―Xも走らせ、「どの鼻の長さでより騒音を抑えられるかデータを収集する」(浅野所長)という。

 公益財団法人・鉄道総合技術研究所によると、高速の新幹線がトンネルに入ると、前方に押し出された空気が出口で一気に放出され、大きな破裂音や振動を引き起こす。「トンネル微気圧波」と呼ばれる現象で、騒音規制などをクリアする必要があり、その対策として車両の先端をとがらせ空気の流れを整えるのが有効とされる。

 速度アップと騒音の軽減を両立させるため鼻は伸びてきたが、一方で座席が減るというデメリットもある。現在、東北新幹線などを走行する「E5系」の先頭車両(全長26・5メートル)は鼻が15メートルで、座席数は29席。試験用のALFA―Xに座席はないが、鼻が22メートルのタイプで設置可能なのは15席と見込まれ、ほぼ半減する計算だ。

 これに対し、JR東海が試験中の新型車両「N700S」の先頭車両(全長27・35メートル)は、鼻が現行の「700A」と同じ10・7メートルで、座席数は65席を維持。「鼻の形状を工夫することで微気圧波を抑えている」(広報担当者)という。試験では時速360キロ超を記録したものの、東海道新幹線はカーブが多く、営業運転では現在と同じ最高速度(時速285キロ)で走らせる。

 鼻はいつまで伸び続けるのか。時速400キロに挑むALFA―Xの試験を通じ、鼻が16メートルの車両でも22メートルと同程度の性能が得られれば、「長鼻」化は一区切りがつく可能性がある。浅野所長は「鼻の長さについては技術的判断だけでなく、経営的判断も大きい」と話している。【高橋昌紀】


(毎日新聞)








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