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サンエーパルコ、イオンモールそれぞれの戦略 自社内競争の指摘も 商業環境の変化(2)〈熱島・沖縄経済〉44


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売り場面積が県内最大規模で、4月に新装開業したイオンモール沖縄ライカム=北中城村

 「売り場面積が県内最大規模の約8万6千平方メートル」「県内初出店の94店舗を含む250店舗が入居」。大型商業施設のイオンモール沖縄ライカム(北中城村)とサンエー浦添西海岸パルコシティ(浦添市)は、それぞれの強みを前面に押し出して地元客や観光客の呼び込みを目指す。各店舗が積極的な事業展開を進める状況下で、自社内で競合が起きることを指摘する意見も上がる。

 沖縄ライカムは4月末に店舗面積を約8千平方メートル増床して新装開業した。佐藤規正ゼネラルマネージャー(GM)は「大型連休やパルコシティの開業前に増床エリアをオープンしようと思った」と説明する。競合店の動向を視野に入れ、顧客満足度を高めるため店舗の改装を進めたという。

 今後はパルコシティの開業による影響が「少なからず出る」と見る。沖縄ライカムがターゲットとする家族連れに加えて、外国人観光客も過ごしやすい店舗づくりで集客を維持する方針だ。佐藤GMは「競争環境の中で切磋琢磨(せっさたくま)して、独自の路線を考えないと淘汰(とうた)される」と強調する。

 パルコシティには沖縄初出店のブランドがそろう予定で、サンエー経営企画部長兼財務部長の豊田沢氏は「新しさを感じられる複合施設に仕上げた」と自信をのぞかせる。日用品や県産品も取り扱い、幅広い品ぞろえで他店との差別化を図る考えだ。

 今後も県経済は拡大し、消費は活性化すると考えており、豊田氏は「競争も一部では出るはずだが、それ以上の成長に支えられている」と指摘する。パルコシティの開業直後は周辺の店舗への影響が出る可能性もあると分析する。それでも豊田氏は「数カ月で影響は薄まるはずだ。既存の店舗が強みを生かすことが重要になる」と話した。

 沖縄ライカムやパルコシティは県内全域を商圏として捉える中で、近接エリアには商業施設が多く、顧客の奪い合いが発生する可能性もある。沖縄国際大学大学院でマーケティングを研究する上原彰公氏は「店舗が多く出ることはドミナント(高密度多店舗出店)の効果も期待できるが、自社の店舗で共食いになるデメリットもある」と分析する。

 小売業に詳しい県内経済関係者は「自社競合を避けるため、近接する商業施設には複数のテナントを出さないブランドもあるようだ」と話す。一方、近接エリアで複数テナントを出店する戦略のブランドもあるといい、同関係者は「相乗効果になるのか、自社競合になるのか」と今後の動向を注視する。

 県内の消費環境が活性化する中、各社はライバル店への対策にとどまらず、自社内での競合を避けるための戦略も求められている。

(「熱島・沖縄経済」取材班・平安太一)

(琉球新報 2019年6月18日掲載)