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興南 全国頂点 熱風歓喜、球史に感動刻む

 【甲子園取材班】リードされても最後まであきらめなかった。強豪を相手に堂々と戦った。そして手にした全国制覇―。3日の第82回選抜高校野球大会決勝で優勝した興南ナインとともにアルプススタンドも燃えた。沖縄中が歓声と拍手で揺れた。甲子園を駆けたかつての球児たちは自らのユニホーム姿とだぶらせ、胸をときめかせた。米軍統治下の1968年、「オキナワここにあり」と全国に知らしめた“興南旋風”から42年の今年、新たな風が甲子園を席巻し、高校野球史に感動の歴史を刻んだ。

 「やったぞ。全国制覇だ」。応援団と一般の観客がメガホンを頭上でたたき合わせて喜びを爆発させる。笑顔と泣き顔が入り乱れ、肩を組んで校歌を熱唱する。興南がセンバツ優勝を決めた3日午後、甲子園球場の三塁側アルプススタンドは興南が起こした“旋風”に巻き込まれ、観客が一体となった。
 試合終了後、沖縄尚学が全国制覇した1999年、2008年と同じく観客のウエーブが応援席を包んだ。選手たちが三塁側に整列し、観客に頭を下げると「おめでとう」「夢をありがとう」と声を掛け、偉業を成し遂げた選手たちを拍手でたたえた。閉会式が終わっても、興奮冷めやらぬ観客はスタンドを離れようとはしなかった。
 ピンチの時もチャンスの時も選手の名前を叫び、鼓舞し続けた応援団長の當眞嗣龍君(17)=3年=は「ピンチの時こそ声を出して選手を勇気づけたい」と自らに言い聞かせた。
 打席に立った選手の名前を観客に知らせるボードは「県外の人にも分かりやすく」と平仮名と片仮名で書いた。「選手たちに、僕らの声は届いている」。そう信じて當眞君は声をからした。
 勝ち進んでいくたびに、アルプスの一体感は増していった。昨年の春と夏の甲子園に続いて新潟県から興南の応援に来ているという菅原優輝さん(25)=会社員=は「これまで負けてきた悔しさでリベンジしようという気持ちが勝利につながったと思う。沖縄勢のアルプス応援もとても楽しかった」と喜びを分かち合った。

◆祈り、声援届いた 母校で生徒ら700人熱狂
 興南高校体育館には生徒や保護者ら約700人が集まり、太鼓をたたき、指笛を鳴らして、大型スクリーンの向こうの選手たちに声援を送った。延長戦で緊迫した投手戦が繰り広げられると、生徒たちは真剣な表情で祈るように画面を見詰めた。十二回表に興南が得点すると跳び上がって喜び、試合終了時には抱き合って涙を流す人もいた。
 バスケットボール部の仲間と共にメガホンをたたき、声をからして応援した仲西智彦君(16)=2年=は「身近な先輩たちが大舞台で活躍し、感動した。逆転した時は何がなんだか分からないぐらいうれしかった」と興奮して話した。
 少年野球の志真志ドリームス(宜野湾市)で副主将を務める玉城圭輔君(11)=志真志小6年=は、同チーム出身の島袋洋奨、慶田城開両選手の名前を書いた手作りのボードを掲げて駆け回り、応援を盛り上げた。「2人ともかっこよかった。自分も甲子園で優勝したい」と笑顔をはじけさせた。
 甲子園のスタンドで応援した名嘉耕平選手(2年)の母・真弓さん(41)=浦添市=は「先制されても我慢強く戦い、精神力の強さを感じるいい試合だった。息子も先輩方を目標に、あの場所に立ってほしい」と声を震わせた。

◆平和通り「粘り強く頑張った」
 5点をリードした延長十二回裏。日大三の最後のバッターが打ち上げた白球が興南の安慶名舜選手のグラブに入った瞬間、テレビにくぎ付けとなった県民は優勝の喜びをかみしめた。那覇市内のショッピングセンターや電器店で観戦した市民は喝采(かっさい)とともに「感動をありがとう」「よくやった」と球児をたたえた。
 那覇市のパレットくもじ1階のテレビ前には多くの買い物客が集まり、興南の好守、好打に身を乗り出して喜び、カチャーシーを踊り出す男性もいた。
 宮城均さん(55)=那覇市=は「決勝戦にふさわしい試合だった」と喜んだ。
 那覇市安謝の電器店のテレビ販売コーナーでは100人以上の買い物客が詰めかけた。
 家族で訪れた石垣千歳さん(39)=宜野湾市=は「すごい。感動をありがとう。粘り強く頑張った結果の勝利だ」と声を弾ませた。
 根間盛一さん(45)=南風原町=は「全選手が、試合ごとに精神面が強くなっていくのが分かった。よくやった」と笑顔で話した。
 浦添市からきた嘉味田美由紀さん(46)と砂川千枝子さん(59)は「興南旋風が優勝をもぎ取った。若い力が沖縄を元気にしてくれた」と大喜びだった。2日の準決勝戦に続き、平和通りではテレビを設置し、買い物客らが観戦。優勝の瞬間、「バンザイ」の声が響き渡った。


興南ナインの熱戦に沸く三塁側アルプススタンド=3日午後、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場

大型スクリーンに映し出されるナインに声援を送る興南高校の生徒や関係者=3日午後、同校体育館

テレビ観戦し、優勝の瞬間に「バンザイ」の声を上げる買い物客ら=3日午後、那覇市の平和通り