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<書評>『佐藤優のウチナー評論2』 斬新な視点から沖縄論じる


<書評>『佐藤優のウチナー評論2』 斬新な視点から沖縄論じる 『佐藤優のウチナー評論2』佐藤優著 琉球新報社・2750円
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 現代沖縄の姿を規定する論理は、アメリカの覇権を前提として構築され、東京で整備されてきた。これは沖縄にとっては不条理な論理である。このような言説に対抗し、斬新な視点から沖縄を論じてきたのが「佐藤優のウチナー評論」である。本書は、琉球新報紙上で2008年から続いているコラムの、過去14年間の722回分から128作を選んで編集されている。

 著者は現代日本を代表する知識人、その博覧強記の議論は多岐にわたる。主要なテーマは、沖縄人、アイデンティティー、自己決定権、「構造的差別」、琉球語、教育、文化と政治など、いずれも沖縄が直面する喫緊の問題であり課題である。このような議論の基礎になっている視点が三つほどある。

 第一に、著者が自らに課した仕事の一つが「沖縄の想いを日本人に伝え、日本の論理を沖縄に紹介する」ということだ。本書は、日本政治の深層にある沖縄像を痛烈に批判し、「自己決定権の強化」に向かう沖縄側の課題や対応について提言する。

 第二に、著者はかつて外務官僚として勤務したソ連とロシアおよびその周辺の少数民族の有する世界像を紹介しつつ、アメリカを中心とする世界像を相対化する。かくして本書では沖縄を巡る新たな世界秩序が提示される。

 第三に、本書の深層を貫く主題の一つが、著者自身のアイデンティティーを巡る物語だということだ。その自己認識が「沖縄系日本人」から「日本系沖縄人」へとシフトする過程で、久米島出身の母、大城立裕、大田昌秀、翁長雄志ら各氏と深い議論が交わされる。そして、このような変遷に伴って「沖縄人先住民論」へと議論が深化され、世界に拡散したオキナワ・ディアスポラまで視野に入れた、新たな沖縄アイデンティティー形成の可能性が示唆される。

 沖縄の未来はどうあるべきか。著者は沖縄の平和に必要なのは「イデオロギーではなく、リアリズム」であると書く。鋭い洞察と多様な提言に満ち、「祖国」沖縄に対する深い思いあふれる一冊である。

 (山里勝己・名桜大名誉教授)


 さとう・まさる 1960年、東京都生まれ。作家、元外務省主任分析官。母親は久米島出身。「国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて―」で毎日出版文化賞特別賞受賞。新聞・雑誌などに外交評論や文化論を執筆している。