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半導体人材 地域単位で 産官学で育成、高専けん引


半導体人材 地域単位で 産官学で育成、高専けん引 佐世保工業高専で行われた、半導体の基礎を学ぶ講義=2022年7月、長崎県佐世保市
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 国内の地域ブロック単位で半導体人材を養成する産官学連携の枠組みが次々立ち上がり、取り組みを本格化させている。域内に生産拠点を持つ半導体企業と、地元の大学や高等専門学校が一体となり学生を指導、行政も支援して枯渇した人材基盤の再建を目指す。
 エレクトロニクス企業の業界団体、電子情報技術産業協会(JEITA)によると、国内の主要半導体メーカー8社だけでも今後10年で新たに4万人が必要で、決定的な人材不足の状態にある。
 枠組みづくりは半導体受託生産の世界大手、台湾積体電路製造(TSMC)の熊本誘致に成功した九州が昨年先行した。今年6月には次世代半導体の国産化を目指すラピダスを呼び込んだ北海道が加わった。
 岩手県にキオクシアの工場がある東北、広島県に米マイクロン・テクノロジーの工場がある中国、三重県にキオクシアの工場がある中部にも同様の枠組みがあり、関東も動き始めた。
 連携は半導体への関心が低迷している理系学生に分野の重要性や成長可能性をアピールして人材を掘り起こすのが狙い。特に即戦力としてもともと企業の評価が高い高専が存在感を増している。
 企業側が各地域で求める人材や技能要件を示し、技術者による出前授業や実習の受け入れ、カリキュラムの作成協力などを通じて関与する。
 日本の場合、先端領域の研究開発を含めて企業が多くの部分を担っており、企業の技術者が先生役になることで、より高度で実践的な授業が可能になるという。
 国内では1990年代以降、日本勢の衰退と軌を一にして半導体を専攻する学生が減少。人材不足が年々深刻化し、経済産業省によると半導体産業の従業員数はこの20年間で約3割減った。
 半導体が経済安全保障上の重要物資になり、ハイレベルの研究開発から製造まで、あらゆる層で担い手を増やすことが緊急の課題に浮上。世界の半導体供給で重要な地位を占めるTSMCの熊本進出をきっかけに、先送りできない課題である実情が浮き彫りになった。
 取り組みをけん引する国立高等専門学校機構の谷口功理事長は「日本の半導体産業にとってラストチャンス」と強調。JEITAの担当者は「業界も危機感を持って真剣に取り組んでいく」と話している。
佐世保工業高専で行われた、半導体の基礎を学ぶ講義=2022年7月、長崎県佐世保市