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コロナ禍の債務超過からV字回復 過去最高益のOTS、その起爆剤とは<Who強者How強者 沖縄企業力を探る>7


コロナ禍の債務超過からV字回復 過去最高益のOTS、その起爆剤とは<Who強者How強者 沖縄企業力を探る>7 OTSレンタカーの強みをスタッフとともにPRする東良和会長(右から3人目)=8月21日、豊見城市
この記事を書いた人 Avatar photo 與那覇 智早

 コロナ禍が明けて人流が回復した2023年、県内最大手の旅行社、沖縄ツーリスト(OTS、那覇市)は創業以来、過去最高益となる16億1954万円を計上した。

 売り上げの8割以上を占めるレンタカー関連事業を強みに、コロナ禍で膨らみ、解消に約8年かかると想定された債務超過からV字回復を果たした。

 OTSレンタカーの利用割合は、国内客とインバウンド(訪日客)が約3対7で、海外客の方が多い。台湾や香港を中心としたアジア圏からの受け入れに国内でも先駆けて1990年代から注力してきた。レンタカー部に設けた10のカウンターで、インバウンド客に対応している。

インバウンド客らでにぎわうOTSレンタカーのカウンター=8月31日(提供)

 自社の予約サイトは日本語、英語、中国(繁体)語の3カ国語に対応しており、それに韓国語を加えた4カ国語対応のオペレーターも常駐するなど、多言語対応に強い。70年に開設し、そのブランドも浸透していることから、インバウンドの予約は自社サイトを通してがほとんど。そのため、価格を維持したまま顧客を獲得できる。

 そんなOTSレンタカーのインバウンド利用に拍車をかけたのは、2019年に大同火災海上保険と共に提供を開始した、外国人旅行者向けの保険「One Two Support訪日旅行保険」だった。

 保険料はレンタカー1台ごとに設定されており、車種ごとの最大乗車定員数分の傷害、疾病の治療費、移送費用などを補償する。外国人旅行者は旅行保険への加入率が低く、旅行中の医療費が高額となる問題があったが、1台ごとに保険料を設定する画期的な海外旅行保険が話題を呼び、開始直後から1日100件のペースで申し込みがあった。慣れない土地での運転で同乗者にも保険が適用される安心感から、19年度の利用件数は3万4千件を超えた。

 19年は県内への入域観光客数が過去最高の1千万人に上った。20年に予定されていた東京五輪に向け、沖縄観光が盛り上がりを見せ、事業拡大へという矢先の新型コロナウイルスの流行はOTSにとっても大きな打撃だった。人流が止まり、旅行部はもちろん、レンタカー部などの活動も1割程度まで落ち込んだ。

 新型コロナが流行した20年に計上した営業損失は33億円。その時を振り返り東良和会長は「毎晩1千万円が消えていく生活だった」と事態の壮絶さを語る。土地や建物、子会社の売却を試みるも事態は収拾せず、20年には12億4206万円の損失を計上。新型コロナ感染拡大からの約2年半で営業損失は43億円にまで膨れ上がった。債務超過は19億円。会社の規模からすると、倒産してもおかしくない、絶望的な数字だった。

 しかし、コロナ禍前に開発した独自のレンタカーサービスが力を発揮する。旅行部の実績に加え、信頼感から海外客へのサイト認知度は広がりをみせ、外国人旅行者向けレンタカー保険利用は24年度も3万件以上を見込んでおり、コロナ明けの経営立て直しの大きな支えとなっている。

 国内客のみでは、夏の時期や年末年始などの特定の時期に利用が集中してしまう。しかし、「インバウンドはオフシーズンを埋めてくれる」(東会長)。那覇空港の国際線の就航便数がコロナ前の約7割にとどまることについても「伸びしろ」と捉えている。

 19年に沖縄地区で約2千台あったレンタカー台数は、コロナ禍で430台にまで減少した。コロナ前はピークに合わせて人員を配置していたため、閑散期には車のリース料や人件費が余分にかかっていたという。現在はピーク時より約500台少ない約1500台となったが、レンタカー単価の上昇や稼働台数の効率化などから、収益率は約10%改善した。

 東会長は「以前は予約を断ることが怖く無理して受けていたが、経営資源の範囲を超えた部分に関しては勇気を持ってお断りすることが生産性向上につながる」と話す。コロナ禍での人手不足を受けての効率化から、運用形態も変化してきた。 

(與那覇智早)