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沖縄は「有望市場」その根拠は ファミリーマート、ローカル徹底でシェア1位死守へ<小売烈戦ー激変の沖縄市場>12


沖縄は「有望市場」その根拠は ファミリーマート、ローカル徹底でシェア1位死守へ<小売烈戦ー激変の沖縄市場>12 「上間」の沖縄天ぷらが並ぶ沖縄ファミリーマートの店内。地元の嗜好を徹底的に分析した商品展開を強みとする=12日、浦添市内
この記事を書いた人 Avatar photo 島袋 良太

 「僕らから言えば東京の市場はゆるゆる。進出させてくれと言いたいくらい」。人口1万人当たり、全国3位の密度でコンビニが立地する沖縄は競争が激化する。例年トップ5に入る東京の状況について、沖縄ファミリーマートの糸数剛一社長はこう解説する。数値の基となる人口は住民登録を基礎にしているが、経済の中心地である東京は日中に多くの人が隣県から通うため、コンビニの立地密度は統計上の数字よりも低いとみられる。沖縄はより密度が高い状態でコンビニがひしめくという分析だ。

 そんな県内でコンビニシェア1位を走り続けてきたのが「ファミマ」だ。2024年4月時点の県内店舗数は336店で最多、ローソンの263店、セブン―イレブンの172店を引き離す。さらに1店舗当たりの1日当たりの販売額(日販)は60万円を超え、全国のファミマの中でも断トツの1位を走る。

 強みは県民の嗜好(しこう)を分析し、商品を投入するローカル戦略だ。祝いの席で「ケンタッキー」を食べるなど、とにかくフライドチキンを食べる県民。00年にレジ前で発売した骨付きフライドチキン「フラチキ」は爆発的人気を呼び、全国での「ファミチキ」販売にもつながった。ざるそばもめんつゆを「沖縄好み」でかつおだしを全国より強めに出している。

 県民が「天ぷら」をおやつのように食べることに着目し、「上間弁当天ぷら店」監修の沖縄天ぷらもヒット商品に。一時は製造が追い付かないほどだった。「沖縄ぜんざい」の雄、「富士家」とコラボしたぜんざいも手土産などとしての需要を生んでいる。県内有力他社との協業も積極的に行い、誘因力にしてきた。

 「究極のローカライゼーション」をキーワードにする沖縄ファミマ。糸数社長は「競争が激化する中での生き残り策は個性の追求。ストロングポイントを徹底的に伸ばすことだ」と話す。

沖縄ファミリーマートの糸数剛一社長

 新興スーパー「ロピア」や米系大手量販店「コストコ」などの進出も続く中、糸数社長は県内小売り市場の競争激化は続くと見ている。沖縄が「有望市場」と映る根拠は、単に人口などの一般的な指標だけではない。

 糸数氏が重視するのは“ラテン指数”だ。県民の楽観的な「ラテン気質」は貯蓄よりも支出への動機が高く、旺盛な消費が県経済の好循環を呼んでいるというものだ。「小売業が進出する際には地域の所得水準を分析するが、それでは足りない」との見方だ。

 沖縄ファミマがもう一つ力点を置くのはシェアトップの死守だ。「1位じゃなければ好調を維持できない」。首位であることは世間の評価が高い証し。それがさらなる支持を集める。「空白地帯」への出店はもちろん、売り上げ調査で好調な地域には、他チェーンが入り込む前に同じファミマをもう一つ建てる「ビルド&ビルド」も視野に入れる。

(島袋良太)
 (随時掲載)