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ヤギ汁もコンビニで 弁当で女性支持を獲得、サンエーとの連携強みに<小売烈戦-激変の沖縄市場>13


ヤギ汁もコンビニで 弁当で女性支持を獲得、サンエーとの連携強みに<小売烈戦-激変の沖縄市場>13 店内でご飯を炊く出来たての「まちかど厨房」は県内のローソン店舗の約8割で導入されている
この記事を書いた人 Avatar photo 島袋 良太

 5年前のセブン―イレブン県内進出で競合店が増える中でも、現在の売上高はコロナ前を上回っていると強調するローソン沖縄の遅沢正晃専務。県内の小売業界は既にオーバーストア状態にあるとの指摘もあるが、「あまり悲観していない。切磋琢磨(せっさたくま)すれば商圏は広がる。新たなニーズの気付きにもなる」と、県内市場の成長の可能性に言及した。

 沖縄観光は回復基調にあり、来年には本島北部に大型テーマパーク「ジャングリア」の開業が控える。観光客による売り上げの上乗せに期待しつつも「一番重要なのは県民の支持だ」とターゲットを見据える。

 プライベートブランド商品「ローソンセレクト」に、その一端がみられる。沖縄限定総菜の中には炙(あぶ)り軟骨ソーキや炙りラフテー、さらにはヤギ汁までも取りそろえる。

 強みは資本関係にある県内スーパー最大手のサンエーとの相乗効果だ。サンエーでもローソンセレクト商品を扱い、商品を横展開で浸透できる。さらにおにぎりの具材など一部材料を共同仕入れすることで経費圧縮にもつながっている。決算公告によると、ローソン沖縄の2024年2月期の純利益は8億2千万円。県内店舗数1位の沖縄ファミリーマートの9億円に迫る水準だ。

 22年から販売する「沖縄ぜんざい」はサンエーが展開する和食レストラン「和風亭」の監修。「商品を認知してもらうには時間がかかるが、県民の認知度が高い和風亭の信頼感で発信力が上がる」と強調する。

 店内で作る出来たての弁当「まちかど厨房」も差別化の一つ。県内店舗の約8割で導入した。県民好みのタコライスや豚カツなどを取りそろえるが、一番人気は「鶏と彩り野菜の甘酢たれ弁当」。「甘酢」や「野菜」が従来の“うちなー弁当”を敬遠していた女性客から特に支持を得て、客層を拡大しているという。

 独自性を高め競争を勝ち抜こうとするコンビニ各社。「沖縄は向こう5年で全国一の競合区になるだろう」と遅沢氏は見通す。今後重視するのは空白地への出店と需要の見極めだ。沖縄でも人口減少や高齢化が進む中、従来のスーパーや共同売店が経営するには難しい地域も出てきた。
 一方、買い物に行くことが困難な高齢者や多忙な人など変化する都市部のライフスタイルに着目。機動性の高い「小商圏」を得意とするコンビニであれば、デリバリーを含めてさまざまな選択肢があると分析する。

 県内シェアはファミマに次ぐ2位。「シェアは高い方がいいが、目的ではない。スーパーや商店が成り立たない地域へいかにアプローチしていけるか。突き詰めるとお客さまに必要とされているか。どうやったら1店ずつ確実に開店していけるか、方法を考える」。手堅い経営で拡大を目指す。

  (島袋良太)
 (おわり)