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世界とつながる社会性 スプリー・ティトゥス(琉球大学教育学部准教授) <未来へいっぽにほ>


世界とつながる社会性 スプリー・ティトゥス(琉球大学教育学部准教授) <未来へいっぽにほ> スプリー・ティトゥス
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 5回にわたり沖縄の現状から教育の課題と可能性を考察してきたが、最後のコラムでは「世界とつながる力」を共有したい。沖縄では人に対して素晴らしい感性を持つ方に出会うことが多い。私はこの特徴に感銘を受け「沖縄ヒューマニズム」と呼んでいる。西洋的なヒューマニズムとは異なるが、人を中心に置いた「おおらかな」社会性を育み、世界とつながる文化的成果として認めるべきだ。

 沖縄は昔から、地域文化を生かし、海の向こうの人々とうまくやり取りできる、世界とつながる力を培ってきた。小さな島々の社会ながら諸国から来る人々への好奇心が豊かで、開かれた姿勢を持つうちなーんちゅは、あらゆる教育で養った社会性を力にしていた。

 鎖国を経験した「内地」は、異文化との向き合い方に関して沖縄と全く異なる歴史を歩んできた。日本は戦後の高度経済成長で世界に近づいたが、バブル崩壊後、どんどん内向きになっている。学校教育も原因の一つだ。教員や地域の教育委員会の責任ではなく、中央主義的なトップダウン型の組織構造が問題だ。勉強は足りているが、生徒たちが学校で経験する縦社会が価値観を狭くしている。

 文部科学省は「多様性」という言葉を使うようになったが、トップダウン型の指示で多様性は生まれないので、地域や学校が多様性を主体的に解釈して取り組むべきだ。世界とつながる力とは、沖縄が歴史の中でうまくやってきたように、異なる価値観を持つ人々と向き合える力だ。その基礎は人を型にはめない、民主的な社会性の経験にある。その側面から学校で学ぶ社会性を再考すれば、沖縄はいつでも世界とつながれる。

スプリー・ティトゥス

 琉球大学教育学部准教授。ベルリン芸術大で建築の修士課程を修了した。沖縄を拠点にアート・まちづくり・教育を横断的に結びつける国際的な活動を展開している。1966年生まれ、ドイツ出身。