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修学支援新制度で進学の機会 久米忠史(奨学金アドバイザー、まなびシード代表取締役) <未来へいっぽにほ>


修学支援新制度で進学の機会 久米忠史(奨学金アドバイザー、まなびシード代表取締役) <未来へいっぽにほ> 久米忠史
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 現在、全国で約4万2千人の子どもたちが児童養護施設や里親家庭などで暮らしている。琉球大学4年生のAさんも1歳半から高校卒業までを児童養護施設の島添の丘(南城市)で過ごした。

 厚労省によると、2021年度の児童養護施設出身者の大学・短大進学率は22.6%であり、全平均の56.1%と比べて著しく低い。逆に就職率は53.8%(全平均15.6%)と半数以上が高校卒業後すぐに社会に出ている。進学率が低い理由はさまざまな要因が絡み合い決して単純なものではないと思う。ただし、金銭的な面では20年度に始まった、国の高等教育の修学支援新制度(給付型奨学金+学費減免)により進学の可能性が飛躍的に広がっている。

 社会的養護が必要なほとんどの学生は最高額の支援が受けられる。Aさんは、国立大生なので学費が無料の上、年間80万円の給付型奨学金が支給される。Aさんはそれ以外にも複数の民間の給付型奨学金を受けているとのことだ。

 全国児童養護施設協議会では、当事者となる学生向けの奨学金情報を発信している。先の島添の丘では、自立支援担当職員が、子どもたちへの奨学金説明会を毎年独自に行っている。Aさんも「担当職員からのサポートに大きく助けられた」と言う。政府では、社会的養護が必要な学生のために受験や生活準備費用の支援を拡充しているほか、県も独自に支援に取り組んでいる。

 自身の境遇ゆえ、初めから進学を諦めている子どもたちは多いかもしれない。しかし、修学支援新制度が環境を一変させた今こそ、学びたいと願う子どもたちはぜひ希望を持ってもらいたい。

久米忠史 くめ・ただし

 奨学金アドバイザー。まなびシード代表取締役。2004年から沖縄の高校で始めた保護者・高校生向けの奨学金ガイダンスが好評で、現在は全国各地で講演を行う。1968年生まれ、和歌山県出身。