芸人のホンキで県民を笑顔に お笑いプロジェクト「てんたか」 ありんくりん&キャンヒロユキさん直撃と第2回ライブ/てんたか追っかけリポ#3(2ページ目)


この記事を書いた人 Avatar photo 饒波 貴子

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芸人を支える放送作家、キャンヒロユキさんにインタビュー

―「てんたか」初ライブを今年3月に開催。半年が過ぎ、ライブ2回とテレビ3局での番組放送を終えました。手応えなど教えてください。

3事務所の芸人さんたちが舞台でしゃべって番組で共演し、やっぱり面白いな~と思いました。実力ある芸人さんはもちろん、若手も参加できるのがいいですね。6月のライブから「まえたか!のコーナー」という若手の場も作りました。先日のミーティングでは芸歴の長い芸人さんが、「自分たちも楽しいけれど、若手が楽しそうにやっているのっていいよね~」と話していたのもうれしく思いましたね。「てんたかのライブや番組に出たい」という気持ちでいいネタを作ってくれることもありますし、強いキャラクターに前面的に出てもらうなどいろいろなやり方があるので、お笑い界の底上げをしていきたいと考えているところです。

―「まえたか!のコーナー」は本編の30分前、開場中に始まるのでビックリしました(笑)。

本編に入れると時間オーバーになりますし、若手のコーナーは線引きしたかったんです。お客さんが入場するリラックスした中でやってもいいねということで始めてみましたが、いい感じでできたと思っています。

(左から)キャンヒロユキさん・首里のすけさん
(左から)キャンヒロユキさん・首里のすけさん

―見る側は、若手や新人を知る機会になり楽しめます。

今後はメディアの方にも多くライブに来ていただき、芸人さんの個性や特徴を知ってもらう場になればと考えています。東京ではバラエティー番組のディレクターがライブを見に行って、テレビに引っ張っていくのが当たり前だったりします。沖縄ではそういう機会はあまりなかったので、「いい芸人さんがいたらピックアップしてください」と紹介がてら見ていただこうかと思っています。事務所の垣根を越えることで起こる化学反応のようなものが、てんたかにはありますから。

―作家集団「作家上等」はどんな風に関わっていますか?

アイデア出しをしています。7月にテレビ放送した中で好評な企画があったので、ライブでやっても面白そうだと話しています。今後はライブで盛り上がったからテレビでもやろう、というパターンもあるでしょうね。7月は特番としてパリ・オリンピック開催前に放送ということで短い準備・撮影期間で取り組み、ネタもコーナーもモリモリにしたので、次は時間配分を考えたいですね。テレビ3局にはかなり協力していただいたので、感謝しかありません。やって分かったことを踏まえながら、レギュラー化に向けて3事務所の代表と話し合っていきます。今はさまざまなメディアがありますがテレビはやっぱり魅力的で、オジーにオバーに両親、家族孝行になると思うんです。「出ているの見たよ」って喜んでくれるじゃないですか(笑)。ローカルはそれがいいな~と思うので、沖縄の芸人さんがメディアに出る機会がもっと増えてほしいです。

―3月のてんたかライブを見た時、沖縄のお笑いがより盛り上がる「すごいプロジェクトが始まった」とワクワクしました。

9月の後、1月初旬にテンブスホールで大きなライブを開催します。プロジェクトのテーマとして芸人さんが芸を披露する機会を作ること、そして1人でも多く芸人として生活できるようになることを掲げています。いきなり生活できるようになるのは難しくても、芸で収入をちゃんと得られるようにということです。例えば芸人として呼ばれてもらったことがなかったギャラをもらうとか、必ずそういう形にしていけたらと思っています。ライブやテレビがゴールではなく、見た人に「この芸人はこういうところで使えます」とアピールする場になります。掛け算したエンタメが腑に落ちるのが現状だと思っているので、例えば美容師をやっている芸人さんが美容師関係のイベントに出演すると、美容師X(掛ける)お笑いになって良いなとか。最近は「商業高校時代に電卓部の部長だった」という芸人志望の子に会ってどういう部活だったのか興味津々になりましたし、今は特徴を生かした活動が主流になると思っています。笑い10ではなく、笑いは3で知識や共感できるものを7くらい持っていれば、良いものができるはずですよ。お笑いは笑わせるだけではなく相手を共感させたりニコニコ喜ばせたり、ハッピーにすることだと僕は考えます。出身地が同じとか趣味が似ているとか、そういう人たちに向けたアプローチができれば、仕事につながると思っています。舞台ではお笑いをやりつつ、個人の持ち味をマーケットに上手くつないでいければとイメージしています。

―ライブは観客を楽しませるのはもちろん、芸人さんにとって個人をアピールできる場なんですね。

空気を共有しながらお客さんを喜ばせるのはライブの楽しさですよね。お笑いをガッツリやる時間があって、得意分野を見せるコーナーも作るとか。特技はなんでも良くて「鉛筆回しだったら自信がある」でもいいですし、「沖縄のダイビング界で一目置かれる存在」だとプロフェッショナルな面をアピールするなど、ピンキリあるのがいいと思っています。芸人からはあまり言ってこないので、特徴を知って面白い企画を考えるのが僕のお仕事。コミュニケーションを取り上手にくみ取れるかが重要です。

―企業に学校、キャンさんがつなげることで芸人さんの仕事が広がりますね。

イベント企画を相談されたら、芸人さんのキャスティングも含めて提案していきたいですね。僕は人を喜ばせるお仕事をしている人を心からリスペクトしているので。お笑いだけではなくてエンタメに関わる人をいろんなところにつなげていきたいと思っています。自分自身もバラエティー専門の放送作家ではなくて間口を広げていますし、アイデアを出すことが大好きなんです。高校の数学講師も10数年続けていますが、音楽講師として「きいやま商店」のリョーサを紹介したこともありました。今後も「これはやりません」とは言わず、いろんな人といろんなお仕事を続けながら、広げていければと思っています。

『てんたかTV』番組制作発表記者会見にて(2024年5月28日@那覇市内)

―キャンさんを見ていると「人が好き」で、仕事につなげる姿勢や接し方など「愛がある」と感じます。

本当に人が好きです。コミュニケーションを取って相手が面白かったとか、ためになったなど思ってくれたらうれしいですし、つなげたことで芸人さんが売れた時は「僕の手柄だ」と自慢します(笑)。表に出ることもありますが基本的に僕はプレーヤーではないので、面白いことをする芸人さんをどんな風に生かして何を作るかとアイデアをまとめ、関係者の温度感を見ながら面白くていいものを完成させなければいけないと、常に心掛けています。

―「作家上等」というチームは、今後どんな風になっていきますか?

てんたかライブでは、コーナーを担当してもらおうと考えています。でも作家のみなさんは人見知りというか、芸人さんのために企画を書いて持って行ったらつながるよと伝えていますが、なかなかできないみたい。ウチナーンチュだな~と感じますね(笑)。数カ月前FECのライブで、作家3人が書いた漫才をユニットコンビが披露したらしいので、楽しいと思いました。作家をアピールして地位を上げていくのがいいですよね。長年演劇の脚本を書いている我那覇孝淳さんと山田享楽さんのスキルは、エンタメ界にもっと求められるべきな気がします。彼らの作品に向ける愛情にはかないませんし、大きく期待しています。

―作家上等と芸人さんたちのコラボが深まるのが楽しみです。てんたかの始まりは、キャンさんを励ます会がきっかけになったと聞きました。

そうです。去年の夏、悩みごとがたくさんあった時に3事務所の代表が食事会を開いてくれました。僕がトイレに行っている間に3人だけで話をして(笑)、「一緒に番組を作ろう」ということになりスタートしたんです。俯瞰でしっかりと見ながら、ライバルなのに手を組もうと判断する3人はすごいと思いましたね。話し合いを重ねる中でテレビ局の方が「3事務所でやるなら3テレビ局で放送すると面白そう」と言ってくださり、過去にないことだからやってみよう、ということになりました。調整に時間がかかったので、待っている間にライブをやりませんかと僕から持ちかけて、3月に初回ライブを開催したんです。ライブもテレビも両方やるべきだと思っていましたから。

―キャンさんのおかげで、てんたかというすてきなプロジェクトができたんですね!

きっかけではありますが、僕のおかげではないですよ。FECは所属していた28年前ごろからの付き合いで、その後よしもとの養成所・NSC東京校に行きました。卒業して沖縄に帰ってきたら「東京で学んだことを教えてほしい」とオリジンの前会長・真栄平房修さんに声を掛けていただき、芸人をスキルアップさせたい気持ちが伝わってきました。そしてよしもとは15年前、「NSC沖縄を設立するから講師になってくれないか」と連絡をいただいたんです。自分は人にチャンスを与えてもらい生かされている、と実感しましたね。作家は1人ではできない仕事です。

―放送作家は県内でキャンさんしかお会いしたことがないですし、大きな存在です。

3事務所とつながりがあり、それぞれの良さも苦労も分かっているつもりです。芸人さんたちの活躍や悩みも実際に見たり聞いたり、人づてで聞こえてきたりして理解しているつもりではいます。それを生かして人が楽しめるものを作っていきたいです。そして「後輩を育てるのもいいんじゃない!?」と言われたこともあり、今までやってきたことを誰かにつなげたいと考えています。僕という存在がたまたま出てきて作家が仕事になったけれど、僕がいなくなり作家が不要になったら突然変異が生まれただけです。作家は必要だという形を作りたくて、声をかけて「作家上等」というチームを作りました。みんなで仕事を回していきたいですし、上手く走り出せたらいいなと思っています。

―最後に、てんたかの展望を教えてください。

テレビは芸人さんが面白がる遊び場のような番組にして、舞台はみんなで助け合っていくのがいいですね。昔は他の事務所の芸人さんがスベっても助けずに知らん顔、という感じでした。自分はスベりたくないですから。でも最近は事務所問わず、自分がスベってもいいと先輩がかぶるように入ってきます。そういう雰囲気を大切にしながら、お祭りなどのイベントに「てんたかチーム」で呼ばれるようになりたいです。3事務所の良さを生かし、企画にハマる芸人さんに活躍してもらうなど適材適所に合わせた提案をしていきます。

―メディアにライブにイベント出演。てんたかの広がりに期待します。