SNSの活用で外国人観光客が10倍に! 「現地の伝統工芸を体験したい」観光客のニーズにもマッチ


社会
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紅型の染めの体験をする香港からの観光客ら。城紅型染工房について「フェイスブックで知った」と話していた=1日、浦添市前田

 紅型製品の製造販売を手掛ける城紅型染工房(浦添市、玉城守和代表)が、台湾や香港の旅行博覧会への出展やソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を活用した情報発信に取り組み、2016年以降、工房を訪れる外国人観光客の数を約10倍に増やすことに成功している。県の調査によると、外国人客には一定の割合で現地の伝統工芸を体験したいという希望がある。ただ、インターネットなどを通じて積極的に情報発信している工房などは少なく、SNSを活用した戦略がニーズに合致した形だ。

 同工房では、15年にほとんどいなかった外国人客が16年に20組、17年に80組、18年に214組と飛躍的に伸び、19年は7月末時点で前年同期比1・5倍(52組増)の166組となっている。外国人客の消費が売上高に占める割合も増加し、16年の1~2%から18年は20%に伸びた。

 1971年創業の城紅型染工房は「暮らしの中に紅型を」をコンセプトに、伝統を守りつつ、生活の中で普段使いできる商品の製造に取り組んできた。原材料費や人件費が高騰する中、売り上げの拡大を目指すため、増加を続ける外国人観光客に目を向けた。

 沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)の助言を受けてフェイスブック(FB)で中国語と英語のページを作成し、台湾の旅行博にも出展した。

 FBのページを作成した当初は全く反応がなかったが旅行博で紅型の染めなど製作体験をしてもらい、FBのフォローや情報拡散を条件に小物をプレゼントするなどしたところフォロワーが徐々に増え、沖縄旅行の際に工房を訪ねる海外客が現れ始めた。

 同工房の外国人誘客を支援したOCVBの担当者は「伝統工芸を体験する外国人の割合が大きく伸びているわけではないが体験を希望する人は一定割合で存在している。SNSを多用する若い層に城紅型工房の取り組みがうまくはまった形だろう」と分析する。

 城紅型工房の山城信吾部長は「沖縄でしかできない体験をしたい、子どもにさせたいという外国人客は多いと感じる。現在も客の8割は沖縄の人だが、県外、海外に紅型の良さを伝え広げることで、業界全体の発展や沖縄文化の発信にもつなげたい」と語った。
 (外間愛也)