辺野古ジュゴン「A」不明 防衛局「工事と無関係」 識者「断定する根拠が不十分」


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絶滅危惧種のジュゴン=2008年3月、名護市嘉陽沖(ヘリから撮影)

 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設が始まって以降、工事海域に近い名護市嘉陽沖に生息していたジュゴン「個体A」の行方が分からなくなっている件について、沖縄防衛局が工事は無関係だとの見解を示していたことが分かった。防衛局が8日に公開した新基地建設工事の第21回環境監視等委員会議事録によると、「当事業の工事および作業による影響でジュゴンが確認されなくなったとは考えられない」としている。

 一方、ジュゴンの調査などを続けてきた環境専門家からは、断定する根拠が不十分だとの指摘が上がっている。

 9月9日に開かれた委員会の議事録によると、防衛局は個体Aが行方不明になっていることについて、「これまでの水中音や振動を発する工事のピークとされる期間でも嘉陽沖でジュゴンが定常的に確認されていた」とした。その上で、個体Aが嘉陽沖の海草藻場を使わなくなったと考えられる期間には、これらの工事は行っていなかったことなどを理由に、作業の影響を否定した。

 これに対して日本自然保護協会の安部真理子主任は「生き物が受ける累積的な影響を無視した意見だ。ジュゴンは騒音に我慢を重ねていたが、耐え切れずにいなくなったのかもしれない」と指摘。工事の他にも周辺海域を海上保安庁の大型船などが航行していることにも触れ、「工事全般の影響は無視できない」とした。

 このところ沖縄周辺海域でジュゴンの目撃情報が続いていることから、個体Aの追跡調査を含めて環境省が主体となり、生息を調査すべきだと求めた。

 議事録によると、防衛局は嘉陽沖でジュゴンの餌となっていた海草藻場は「個体Aの環境収容力として十分残っていたと推察される」とした。個体Aの行方が分からなくなった他の理由は推察していない。