経済

日本の外資規制強化、ガバナンス改革に逆回転リスク

HEARD ON THE STREET



By Mike Bird
2019 年 10 月 11 日 07:07 JST 更新プレビュー



写真はイメージです。


――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

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 外国投資家の審査を強化する案は日本を少しばかり安全にするかもしれない。だがそれは、投資環境の改善に注いだ長年の労力を無にする代償を伴う。

 財務省が今週公表した提案が実施されれば、一部の国内上場企業の持ち株比率が1%に達した海外の株主は当局に届け出なければならなくなる。これまでは10%以上保有する株主が対象だった。対象業種は防衛、通信、海運など多岐にわたるが、日本の上場企業3680社のどれが対象業種に含まれるか厳格には決められていない。決めるのは投資家の責任だ。

 警戒を要する中国の投資に対する政府審査の強化が暗黙の狙いのようだが、外国投資家のはるかに幅広い活動に影響が及ぶだろう。


 手続きが日本語に限定されている現行の届け出は、書類ベースとなっており概して面倒だ。基準を超えた投資家が政府に届け出ることで審査が開始され、出資の撤回につながる判断が下される可能性もある。判断には30日かかるが、財務省は審査期間を短縮するとしている。

 米金融大手をはじめ、日本の投資家を顧客とする欧米のブローカーは日本の競合他社に対し不利な立場に立たされる。規制案は最終投資家とブローカーを区別しないためだ。株主総会の招集を請求できる3%まで持ち株比率引き上げようとするアクティビスト(物言う株主)も、うっぷんがたまるだろう。

 海外ブローカーによる株式取引は日本の総出来高の半分余りを占める。大型株ではその割合はさらに大きい。従って、不利になるのは海外の投資家だけではない。ブローカーが年じゅう身動きできなくなり、もっと悪いことに、業務がもはや意味をなさないと判断すれば、株式取引の流動性は著しく低下しかねない。そのコストは日本の投資家が負わねばならなくなる。

 指数算出会社MSCIによると、日本は外国投資家の権利に関して、ほとんど全ての先進国市場に劣っている。新たな規制はその弱点をますます悪化させるだけだろう。

 言うまでもなく、他国もそれぞれ安全保障絡みの投資規制を持つ。特筆すべきは対米外国投資委員会(CFIUS)で、ここ数年にとりわけ中国企業による買収案件を複数阻止している。

 ただ、たとえCFIUSの仕組みが一段と厳格になったとしても、大多数の投資家にとって、お役所仕事の面倒はずっと少ない。2017年に提出された議会向け最新報告によると、CFIUSが2015年に受け付けた自主申告は143件、審査を実施したのは66件だった。日本では既に年間平均607件の届け出がある。しかも財務省は、基準となる株式の保有比率が引き下げられるのに伴い、届け出は700%増加するとみている。

 日本政府はコーポレートガバナンス(企業統治)改革や、外国人にも国内投資環境を分かりやすくする取り組みで大きく前進してきた。目下の提案は、こうした改善を台無しにするリスクをはらんでいる。




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