経済

【寄稿】その中国製シャツ、作っているのは「奴隷」

寄稿



By Jianli Yang and Lianchao Han
2019 年 10 月 17 日 14:56 JST 更新プレビュー



「写真はイメージです」


――筆者の楊建利氏は中国の元政治犯で人権団体「公民力量」の創設者、韓連潮氏は公民力量の副代表。

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 米税関・国境警備局(CBP)は9月、中国の新疆ウイグル自治区のアパレルメーカー、和田泰達服飾が強制労働ないし囚人の労働力を利用していると非難し、同社製品の輸入を禁止した。これは第一歩である。しかし、米国はもっと踏み込んだ対応を取るべきだ。世界最大の綿製品生産国である中国は、綿生産に必要な労働力を確保するため、世界最大の刑務所システムを構築している。

 この綿グーラグ(矯正労働収容所)は新疆を基盤としている。中国のウイグル人や他のイスラム教徒の大半が暮らす場所だ。中国がイスラム教徒の大量収容を継続し、綿サプライチェーンの垂直統合を強化するなか、新疆では、世界の綿製品分野で中国の支配を脅かす嵐が起きようとしている。

 われわれの組織「公民力量(Citizen Power Initiatives for China)」は、「綿:うそに覆われた繊維」という報告書を発表した。同報告書は、中国共産党が発表したデータのほか、中国企業、目撃者証言から得られた直接的証拠を用いて、この地域の刑務所と再教育キャンプの収容者が中国の綿サプライチェーン維持のため強制労働に従事させられていることを証明するものだ。

 この報告書は、自由貿易をゆがめ、国際的な労働基準に違反し、人権を著しく侵害している現代の奴隷制度について記述している。ソ連時代のグーラグと同様、この懲罰制度は、収容者を僻地に連行し、過酷な労働を科すものだ。それによって国家は金銭的利益を享受し続ける。

 囚人を強制労働させるのは、中国で長年維持されてきた政策だ。共産党政権が誕生した1949年以来ずっと、中国政府は新疆に他の地域の囚人を移送し、厳しい砂漠の環境の中で厳しい労働に従事させ、「新疆の経済発展への貢献」を強いてきた。新疆は現在、人口当たりの囚人の比率が中国国内で最も高い。ウイグル人の再教育キャンプを除いても、新疆(人口2200万)には約75の刑務所がある。これに対し、山東省(人口9900万)の刑務所の数は30を下回る。

 中国政府は2014年、新疆地区のウイグル人を一段と締めつける戦略を導入した。それには、再教育キャンプないし職業訓練センターと呼ばれる場所での多数のウイグル人の拘束も含む。それらは民族的アイデンティティーを浄化し、共産党に忠実になることを意図した場所だ。専門家らの推計では、中国はこの制度の下、100万人を超えるウイグル人を拘束した。

 同時に、中国政府は国内衣料品製造セクターの垂直統合を加速する取り組みにも着手した。繊維と衣料品の工場を新疆の綿生産地の近くに移動する取り組みだ。新疆では、労働者としてウイグル人を利用できる。中国政府は繊維およびアパレル企業に再教育キャンプの強制労働者を送り込み、新疆の生産施設で働かせている。

 2014年以降、この垂直統合に関わるため、約2200社の綿生産およびアパレル企業が新設された。世界的ブランドに商品を供給していると豪語する企業もある。2018年の時点で、中国当局は貧困世帯や犯罪者、拘束者の親族や再教育キャンプの収容者の中から、新たに45万人のウイグル人を雇用したことを文書で明らかにしている。

 和田泰達の呉洪波会長は昨年12月、AP通信に対し、政府が「職業技能教育訓練センター」と呼ぶ施設内に同社が工場を所有していることを認めた。呉氏は「当社は貧困撲滅のために貢献している」と語った。APによると、中国外務省の報道官は訓練センターについて「多くの虚偽の報道をしている」として海外メディアを非難したが、その詳細を尋ねても具体的な説明はなかった。

 この強制労働システムは、2つの目的を果たすために作られたように見える。それは国家の収入を増やすこと、そして経済的成果を通じて新疆を政治的に「安定」させ、同地域の共産党支配を正当化させることだ。新疆の収容所の人々は、綿花畑の開拓に始まり、かんがいシステムの構築、綿花の作付け、収穫、加工から衣料品製造に至るまでの綿のバリューチェーンにおいて主要な労働力となっている。新疆の収容所および強制労働所の当局者は、こうした刑務所企業や工場に関する情報をインターネット上から削除し、刑務所工場の名前を変えて複雑な所有構造を作り、刑務所工場を畑や貿易会社などに見せかけている。

 刑務所と労働収容所は人々を抑圧する従来からのやり方だが、中国はまた、収容に関する新たなモデルを完成させつつある。中国は新疆において世界で最も広大かつ最も人権侵害の甚だしい監視システムを導入し、新疆地区を事実上、野外刑務所につくり変えた。中国から物品を仕入れる企業は原則的に、調達先を監査することができない。住民の行動を監視するための顔認証用カメラ、高性能の音声認識技術を配備してしまえば、人々を隷属状態に置くのに鉄条網に頼る必要はなくなる。

 米国には強制労働によって生産された品目の輸入を禁じる世界で最も厳しい法律―1930年関税法(Tariff Act of 1930)―がある。実態を証明するのが難しいため、同法はほとんど執行されていない。しかし新疆については強制労働がいたるところに存在し、証拠は明白だ。新疆は中国の衣料サプライチェーン最大の供給元であり、欧米政府、企業、消費者は、どのような綿製品であっても中国製であれば、綿生産の強制収容所で作られた製品だと考えるべきだ。

 今こそ現代の奴隷制度を終わらせる時だ。われわれは米国政府に対し、中国からの全ての綿、繊維製品、アパレル製品の輸入を禁止することで、強制労働による製品の輸入を止めるよう要請する。




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