政治

「プリンス」進次郎氏、石炭火力減らせるか

日本



環境相としての手腕が試されている

By River Davis
2019 年 11 月 6 日 07:55 JST 更新プレビュー



小泉進次郎氏の政治家としての未来は、既存勢力を敵に回さずに脱炭素化の約束を前に進めることができるかどうかにかかっている


 【横須賀】小泉進次郎氏は父親の小泉純一郎元首相の跡を継ぎ、10年前に国会議員として初当選して以来、幸運に恵まれてきた。

 その政界のプリンスが今、初の閣僚ポストに就き、試練の時を迎えている。小泉氏は石炭が電源の25%以上を占める日本で石炭依存からの脱却を図ろうとしている。

 米コロンビア大学で学んだ38歳の小泉氏は、戦後の日本で最も若くして閣僚になった議員の一人だ。9月には安倍晋三首相によって環境相に任命され、私生活ではフランス人の父を持つテレビタレントの滝川クリステル氏と結婚したばかり。小泉氏はいつ父親の後に続いてもおかしくないように見えた。

 環境相に就任した直後、ニューヨークで国連気候変動サミットの前日にこう述べ、環境保護に関心を持つ人々を勇気づけた。「われわれは脱炭素社会の実現に全力で取り組んでいる。気候変動との戦いにおいてより強力な国として貢献する用意ができている」

 さらに小泉氏は、気候変動への取り組みは「楽しく」「クール」で「セクシー」でなければならないとも語った。
 


 しかし日本国内では、安倍政権を支持する大企業やエネルギー政策を担当する役人が、電力不足は許されないと主張している。小泉氏の政治家としての未来は、既存勢力を敵に回さずに脱炭素化の約束を前に進めることができるかどうかにかかっている。

 小泉氏が石炭問題への取り組みで政治的能力を示すことができれば、政治家として将来成功する可能性は十分にある、と高村ゆかり東京大学教授(環境法・国際法)は話す。

 小泉氏の地元である横須賀では、石炭火力発電所の建設計画が進んでおり、環境保護派が建設中止を求めている。

 しかし事業主体である発電会社JERA(ジェラ)の澤木敦生氏は「これからの石炭火力発電所をすぐにやめてしまうということはかなり難しい」と話す。

 小泉氏は最近の記者会見で石炭について聞かれると、ニューヨークで使った言い回しは避け、日本は「石炭火力を含む火力についてその依存度を可能な限り引き下げる」よう努力していると述べた。

 反石炭の立場を取る一部の国とは異なり、日本は天然資源に恵まれていないと小泉氏は指摘。「経済大国として多様な電源を必要としている。こういった事情を抱えていることもご理解いただきたい」と述べた。

 世界では、石炭を後押しし、環境規制が厳しすぎると主張する米国のトランプ大統領から、脱原発で石炭へ依存度が高まっているドイツのメルケル首相まで、各国の政治家が石炭の未来に立ち向かっている。
 

 日本はドイツと似た状況にある。2011年に東京電力福島第一原子力発電所でメルトダウン(炉心溶融)に至る事故が発生して以来、世論の反対で既存の原子炉の運転再開は困難になり、新規プロジェクトの完成は事実上、不可能になった。日本にある運転可能な原子炉のうち、運転が再開されたのは4分の1にすぎない。

 反原発運動の指導者の一人がほかならぬ小泉氏の父親だ。純一郎氏は2001年から06年までの首相在任中は、原発は安全だとだまされていたが、原発事故で目が覚めたと話している。77歳になった純一郎氏は9月の講演で進次郎氏について、「原発をなくして、自然エネルギーで発展できる国にしてほしい」と話した。

 再生可能エネルギーは増えてはいるが、エネルギーコンサルティング会社ウッド・マッケンジーの石炭市場アナリスト、シャーリー・チャン氏によると、石炭火力発電能力は19年から23年までで6.8ギガワットの純増になる見込みだという。チャン氏は「原子力発電で不都合なことが起きれば、石炭にプラスに作用する可能性がある」と話す。

 小泉氏の地元では8月に石炭火力発電所の建設工事が始まった。発電能力は1.3ギガワットで、23年に一部設備の運転が始まる予定だ。発電所の二酸化炭素排出量は年間726万トンに上る。

 新設される発電所は同じ場所で運転されていた古い発電所を更新するもので、そのため環境影響評価(アセスメント)は簡略化された。
 


小泉進次郎氏の地元の横須賀市で建設中の石炭火力発電所 PHOTO: RIVER DAVIS/THE WALL STREET JOURNAL


 地元の団体は建設を中止させようと提訴した。代表の鈴木陸郎氏は「現在建設中の石炭火力発電所を止めなければ、日本はパリ協定の要件を満たすことができなくなってしまう」と話した。「環境大臣としてそれは小泉さんの仕事だ」

 ただ、エネルギー政策を担当し、横須賀の発電所を支持する経済産業省と比べて、環境省の力は弱い。

 石炭火力発電所の支持派は、再生可能エネルギーはコストが高く、安定供給ができないため、まだ主力電源にはなれないと主張している。経産省によると、再生可能エネルギー向けの補助金は電気料金への上乗せという形で国民が負担しており、今年度は約2兆4000億円に上る見通しだという。

 JERAの澤木氏は、中東に依存するエネルギー源の多様化を図る必要があると指摘する。日本は液化天然ガスの多くをカタールなどリスクの高い地域から輸入しているが、石炭はオーストラリアや米国から輸入できる。

 JERAは天然ガスを燃料に使う複数の発電所の建設を進めている。天然ガスは石炭より炭素排出量が少ない。澤木氏によると、横須賀の石炭火力発電所は以前の設備より効率がよく、排出量も少ない。澤木氏は「相対的に排出を下げていくということをしていきたい」と話した。

 地球温暖化対策として排出源への課税を求める衆議院議員の小川淳也氏にとっては、こうした緩やかなアプローチでは物足りない。小川氏は先月、国会の審議で小泉氏にこう迫った。「セクシーでもクールでもチャーミングでも、何でもやってください」




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