「差別なくす区切りに」 ハンセン病補償法成立 元患者や家族 偏見への不安抱え 請求の柔軟対応求める


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 ハンセン病元患者家族補償法と、名誉回復を図る改正ハンセン病問題基本法が15日、国会で成立したことを受けて、県内の当事者からも喜びの声が上がった。一方で、補償の請求によってハンセン病元患者の家族だということを周りに知られることを不安視する声もあり、社会に残る差別の根深さを懸念する。元患者家族はプライバシー保護など、「請求に対して政府は柔軟な対応をしてほしい」と話す。

 ハンセン病家族訴訟の県内原告だった60代女性は「これまで大変な思いをしてきた。とてもうれしい。ただ、抱えてきたものは当事者しか分からない。当事者が出て来られるよう差別偏見をなくす啓発活動を徹底してほしい」と求めた。

 その上で「これを一つの区切りとしてハンセン病に偏見を持つ人たちが変わることを期待したい」と話した。

 訴訟の原告ではないが、ハンセン病元患者の父を持つ男性(47)=豊見城市=は「法律が成立してうれしいことには変わりない。ただ、一番苦労した母は、子どもたちよりも(補償を)手厚くしてほしかった」と語る。

 周囲に知られたくないと補償の請求にちゅうちょする家族もおり、いまだ残る差別偏見の解消に向けて「元患者が高齢化し、減っていることを危惧している。国民それぞれが元患者の声に自ら耳を傾けてほしい」と訴えた。

 母親がハンセン病患者だった宮城賢蔵さん(72)は「人の人生に与えた被害はこの程度なのか。納得いかない」と、原告団が求めた賠償額に届かないことに不満を示した上で「今の時代、いじめなど差別偏見が社会問題化している。今回をきっかけに偏見をなくす方向へ社会の意識が高まってほしい」と話した。