【記者解説】米議会、日本政府に配慮か 法案から普天間移設など再検証削除 説明文に書かれた一文とは…


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 国防権限法案の最終案がまとまった。沖縄が求めていた米軍再編の具体的な再検証を求める条項は省かれたが、進捗(しんちょく)状況の報告書の提出を国防長官に義務付けた。報告書に沖縄の意思が反映される可能性はあるが、法案に付帯された議会説明文では「日本政府との協議や合意なしに米軍再編を見直すことはない」と強調。沖縄が過度に期待しないよう、くぎを刺した形だ。

 6月に可決した上院案は「在沖海兵隊の削減は急務」とし、地元住民の政治的支持の評価など、幅広い項目で米軍再編の再検証を求めていた。

 この条項を最終案に残そうと、8月にシンクタンク「新外交イニシアチブ」の猿田佐世代表や屋良朝博衆院議員が訪米。多くの上院議員から好意的な反応があったという。9月に両院の審議が始まり、法案は早々にまとまるとみられた。だがメキシコ国境の壁建設などで議会内は対立し、長引くことになった。その間の10月半ばに玉城デニー知事が訪米し、辺野古反対の意思を伝えた。関心を示した議員もいたという。

 いつごろから議会の風向きが変わったのか。審議過程で日本政府が働き掛けたのは想像に難くない。議会説明文には日本政府について「直接経費負担、在沖米軍再編の支払い、コミュニティー支援、その他同盟に関連する支出の面で、同盟国の中で最も重要な負担の分担をしている」と高く評価する一文がある。

 議会が日本政府に配慮したとも受け取れる。どのような経緯を経て再検証の条項が落ちたのか。県は今後、背景を調査・分析する必要がある。
 (与那嶺路代)