米軍北部訓練場部分返還3年 鉄板、今も残る 腐食進み撤去困難か


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米軍北部訓練場の返還地のヘリ着陸帯跡地で残存しているライナープレートの一部=2019年9月、国頭村(宮城秋乃さん提供)

 沖縄県の国頭村と東村にまたがる米軍北部訓練場の部分返還から22日で3年を迎えた。返還後、政府は汚染物質の撤去など「支障除去」を終えたとして、返還1年後の2017年12月に地権者に土地を引き渡した。だが支障除去の対象とされたヘリコプター着陸帯「FBJ」付近では、今もライナープレート(防護壁)や鉄板が大量に残っているほか、他の返還地でも廃棄された弾薬などが多数見つかっている。沖縄防衛局はライナープレートや鉄板を「20年3月までに撤去する」としているが地中に埋まったり腐食が進んだりしており、撤去は困難視されている。

 米軍基地返還後の支障除去には通常2~3年の期間が設けられるが、政府は北部訓練場の場合は1年と大幅に期間を短縮した。背景に早期の引き渡しで地元に「負担軽減」をアピールする狙いがあるとされた。

 返還対象となった国有林について、沖縄防衛局は引き渡し時の17年12月22日に沖縄森林管理署と「協定」を締結していたことが判明している。協定はライナープレートや鉄板について「適切な時期に撤去する」と定めている。

 この協定書を情報公開請求で入手した環境保護団体「インフォームド・パブリック・プロジェクト」の河村雅美代表は、「跡地利用法では引き渡しは返還地の支障除去が完全に終わってからになるはずだが、協定からは支障除去が不完全だった実態が分かる。引き渡しに合わせて協定書を結ぶことで、支障除去の責任が曖昧になった。跡地利用法の不備も示している」と指摘。「返還地を世界自然遺産の登録地にする政治スケジュールを優先した結果だ」と批判する。

 河村氏が入手した鉄板搬出を検討する沖縄防衛局の報告書(19年3月)は、周辺の植生などを勘案すれば搬出は「重機等を使用した工法を避け人力による施工とする」としている。

 だが現場を訪ねたチョウ類研究家の宮城秋乃さんは「相当な重量の鉄板が多く、人手による搬出は不可能だ。だが重機を使えば生態系を破壊する」と指摘する。防衛局の報告書も、専門家への聞き取りで鉄板の残存は「やむを得ない」との意見があったと記している。防衛局は本紙の取材に「土砂崩れなどが誘発されることになれば土地所有者と調整して対応する」としており、撤去の“断念”も示唆する。

 政府が1年で終えた支障除去は、対象を(1)着陸帯があった(2)墜落事故が起きた(3)米軍車両が通行した―場所に範囲を限定した。一方、過去には北部訓練場で猛毒の枯れ葉剤を散布したという退役米軍人の証言もあり、今も弾薬などの廃棄物が相次いで見つかっている。防衛局による調査地点以外の場所でポリ塩化ビフェニール(PCB)などによる土壌汚染が引き渡し後に見つかったこともある。

 宮城さんは「100%の範囲は無理だが、訓練で使われたであろう獣道などを探し、できるだけ広い範囲を時間をかけて調査、除去すべきだった」と支障除去の不備を指摘している。
 (島袋良太)