社会

琉球新報が選ぶ2019年の沖縄十大ニュース

 琉球新報は2019年の沖縄県内十大ニュースを選定した。10月31日に首里城の正殿などが焼失した火災のほか、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に伴う埋め立ての賛否を問う県民投票、入域観光客数の1千万人突破、コンビニ最大手セブン―イレブンの進出などが入った。


【1】首里城が焼失 8棟焼損、収蔵品400点失う


猛火に包まれる首里城正殿=10月31日午前4時34分、那覇市首里当蔵町

  10月31日未明、那覇市首里当蔵町の首里城で火災が発生し、正殿、南殿、北殿、書院・鎖之間などの主要6棟が全焼、奉神門、女官居室の2棟が焼損した。扁額(へんがく)「中山世土」など貴重な収蔵品も約400点が失われた。火元は正殿1階とみられているが、出火原因は判明していない。
  
  首里城は沖縄の歴史、文化の象徴として1992年に復元された。2000年には主要国首脳会議(サミット)夕食会が開催され、同年には首里城跡が世界遺産登録を果たした。復元作業は今年2月の「世誇殿(よほこりでん)」「女官居室」などの完成で、終了したばかりだった。
  
  沖縄のアイデンティティーを表象し、心のよりどころとなった首里城の焼失は県民に強い衝撃と深い悲しみをもたらした。しかし、再建に向けた行動も早かった。各界で募金運動が取り組まれ、首里城の再建実現に向け県民の輪が広がった。
  
  県や那覇市などに寄せられた寄付金は12月4日時点で約14億5千万円。県内報道機関10社が取り組む県民募金にも1億6千万円が寄せられている。県外からも多くの寄付金が集まった。
  
  政府も首里城再建に積極姿勢を見せ、「首里城復元のための関係閣僚会議」を開催するなどして、首里城再建への方策を協議した。


【2】県民投票、新基地「反対」 7割超43万4273票


埋め立て反対が7割を占める県民投票の結果を受け、新基地阻止へガンバロー三唱する県民投票連絡会のメンバーら=2月24日、那覇市古島

  米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古沿岸部の埋め立ての賛否を問う県民投票が2月24日に実施された。投票総数60万5385票のうち、7割を超える43万4273票が「反対」で、圧倒的多数の民意が示された。だが、政府は結果を尊重せずに無視して埋め立て工事を続けており、県と国の間で辺野古移設問題を巡り法廷闘争が続いている。
  
  辺野古移設問題を巡っては、1997年に名護市で市民投票が実施され、「反対」の民意が示されていたが、県全体で実施されたのは初めてだった。
  
  辺野古移設に伴う新基地建設反対の民意は国政選挙でも示された。玉城デニー氏の知事選出馬に伴う4月の衆院沖縄3区補欠選挙と、7月の参院選沖縄選挙区ではいずれも、政権与党が全面支援する候補者を辺野古移設に反対する「オール沖縄」勢力の候補が破り、改めて建設阻止の民意が示された。
  
  政府は県民投票や国政選挙で示された民意を無視して埋め立て工事を続けており、2019年も新基地建設阻止を掲げる玉城デニー県政が国を相手に二つの訴訟を提起した。訴訟は国土交通相が裁決によって取り消した県の埋め立て承認撤回の効力を復活させるという目的は共通しており、判決に注目が集まる。


【3】観光客1千万人突破


10連休となったゴールデンウイークを利用して沖縄を訪れた観光客や帰省客らで混雑する那覇空港のロビー=5月5日

  2019年も観光業を中心に、県経済の拡大基調が続いた。観光客数がついに1千万人を超え、景気の良さを反映して県内基準地価は住宅地、商業地、工業地のいずれも全国1位の上昇率を記録した。3月に下地島空港ターミナルが開業するなど、観光客受け入れに伴う建設ラッシュに沸く宮古島市では、居住施設が足りず家賃高騰を招く「宮古島バブル」といわれる状況が起きた。
  
  県文化観光スポーツ部が4月に発表した18年度の入域観光客数は999万9千人だったが、一部航空路線の実績が報告されていなかったことが後に判明し、11月になって1000万4300人に修正された。念願の大台達成だったが、統計ミスでの到達というみそを付ける格好となった。
  
  観光客数は19年度も、4~10月の累計で前年同期比2・4%増の619万9900人で推移した。代替わりに伴うゴールデンウイークの10連休で旅行需要が喚起されるなど、1千万人超を記録した前年度をさらに上回るペースだ。
  
  しかし、日韓関係の悪化で韓国からの観光客が激減し、航空路線の減便、韓国球団のスポーツキャンプ中止など観光業者や地域経済に影響が広がった。


【4】ゆいレール延長

  沖縄都市モノレール(ゆいレール、那覇市、美里義雅社長)は10月1日、浦添延長区間での営業を開始した。それまでの那覇空港駅から首里駅までの15駅に「てだこ浦西」「浦添前田」「経塚」「石嶺」の4駅が加わり、全19駅、総延長約17キロでの運行が始まった。2003年の開業から16年、「県民の足」として定着しているゆいレールの延長に利用者や沿線住民から喜びの声が上がった。


延長区間開業初日、てだこ浦西駅の始発車両に乗り込む人たち=10月1日、浦添市

  浦添延長に伴い同社は、朝のラッシュ時に4分間隔で運行する時間を増やすなど、利用者増による混雑対策に取り組んでいる。那覇大綱挽まつりの中日となった10月13日は、1日の利用者数としては最高の8万2613人を記録した。

  抜本的に輸送力を増強するため2023年度に3両編成車両を運行させる方向で、国や県、沿線自治体の那覇市、浦添市と資金調達計画などの調整も加速した。20年春にはSuica(スイカ)など全国の交通系ICカード10種類が利用できるようになり、利便性の向上が期待されている。



【5】オリオンビール買収


  1月23日、オリオンビール(浦添市)は、野村ホールディングス(HD)の子会社野村キャピタル・パートナーズ(NCAP)と米投資ファンドのカーライル・グループが実施するオリオン株の公開買い付けと、完全子会社化を承認した。長年愛されてきた「県民のビール」の買収に、大きな驚きが広がった。
 


買収承認を表明するオリオンビールの與那嶺清社長(右、当時)=1月23日、浦添市のオリオンビール本社

  3月に買収が成立し、オリオンはNCAPとカーライルが設立した「オーシャン・ホールディングス」の子会社となった。
  
  オリオンが買収を受け入れた背景には、株主が株式の現金化を求めていたことや、ビールの消費減少などの課題を解決するために営業体制やマーケティング戦略の強化などを図る目的がある。
  
  全株の買収額は約570億円。野村とカーライルによる経営は5年程度で完了する予定という。
  
  7月には外資系企業などでマーケティング、ブランド戦略を手掛けた早瀬京鋳氏を社長兼最高経営責任者(CEO)に迎え、新たなスタートを切った。


【6】セブン沖縄進出 パルコ開業、商戦過熱

  コンビニ国内最大手のセブン―イレブンが7月11日、全国47都道府県で唯一店舗がなかった沖縄に初出店した。14店舗が同時に開店し、多くの人が詰め掛け入場を制限する店舗もあった。ファミリーマート、ローソンのコンビニ3大勢力がしのぎを削る構図が沖縄にも到来し、小売業界の競争が激しさを増している。


午前7時の開店と同時に続々とセブン―イレブンの店内に向かう買い物客ら=7月11日、那覇市松山

  6月27日にはサンエー浦添西海岸パルコシティ(浦添市西洲)が開業。沖縄初出店の94店舗を含む250のテナントが入居する。北中城村のイオンモール沖縄ライカムも4月に売り場面積を拡大し、大型商業施設が積極的に事業を展開している。
  
  雇用の改善や観光客の増加を受けて県内は個人消費が活発で、県内外から商業店舗や飲食店の参入、新規開業が続く。一方で、スーパーなどの売上高が前年割れをする期間も出始め、供給過多の指摘もある。


【7】文化功労、人間国宝選出

  組踊と琉球古典音楽の第一人者2人が相次いで評価され、琉球芸能の素晴らしさを全国に再認識させた1年になった。重要無形文化財「組踊立方」保持者(各個認定)=人間国宝=の宮城能鳳さん(81)=与那原町=が3月に日本芸術院賞、10月に2019年度文化功労者に選ばれた。いずれも沖縄県出身者では初めて。 


2019年度文化功労者として顕彰された宮城能鳳さん(右)と国指定重要無形文化財「琉球古典音楽」(各個認定)保持者=人間国宝=に認定された中村一雄さん

  琉球古典音楽・野村流伝統音楽協会会長の中村一雄(いちお)さん(73)=那覇市=が10月、国指定重要無形文化財「琉球古典音楽」(各個認定)保持者=人間国宝=に認定された。県内の人間国宝は13人目で芸能分野は8人目。
  
  それぞれの受賞について宮城さんは「若い人たちと一緒に沖縄の素晴らしい伝統芸能を世界へ発信したい」、中村さんは「これからも自分の技芸を磨き、後進の育成に努めたい」と決意を新たにした。


【8】山川、連続本塁打王


ソフトバンク戦で左越えに本塁打を放つ西武の山川穂高=5月21日、那覇市の沖縄セルラースタジアム那覇

  プロ野球パ・リーグ埼玉西武ライオンズの山川穂高(中部商業高―富士大出)が2年連続でリーグ本塁打王に輝いた。今季は43本塁打の120打点。打率は2割5分6厘。2年連続のリーグ制覇にも貢献し、ベストナインにも選ばれた。12月の契約更改では1億円増の2億1千万円でサインするなど、チームからも高く評価された。

  2年連続で全試合出場を果たしたが、8月には不振のため4番を外れた時期もあり、昨季の47本塁打には及ばなかった。50本塁打を目標としていたこともあり、来年に向けて「今季を上回る成績で3年連続本塁打王を取りたい」と意気込む。背番号は33から3に変わる。チームの顔として、より責任感を増して開幕に備える。目標はリーグ3連覇、3年連続本塁打王、そして日本一だ。首里城火災を受け、那覇市へ500万円を寄付したことでも話題となった。
  


【9】米軍の事件事故相次ぐ


燃えて煙を上げる照明弾とみられる二つの物体=12月5日午後、金武町伊芸(読者提供)

  米兵の凶行で貴い命が失われた。4月13日、北谷町桑江のアパートで、在沖米海兵隊所属の米海軍3等兵曹の容疑者(当時32)が元交際相手の住人の女性(当時44)を殺害し、その後に自殺した。女性は事件前から3等兵曹の付きまといがあったとして米軍当局に対応を求めていた。

  米軍機からの部品落下も相次いだ。
  
  6月4日、浦添市立浦西中学校に普天間飛行場所属CH53Eヘリのゴム部品が落下。8月27日にも同飛行場所属のCH53Eの窓が落下する事故が起きた。10月21日には嘉手納基地所属MC130J特殊作戦機の部品が基地内で見つかった。機体から落下した可能性がある。
  
  12月5日には米軍キャンプ・ハンセンの射撃場から発射された照明弾3発が金武町伊芸の民間地に落下した。金武町議会は抗議決議と意見書を全会一致で可決したが、米軍は訓練を再開する意向を示し、地元は強く反発している。


【10】地方自治揺らぐ 宮古島・石垣

  県内では地方自治のあり方が揺らぎかねない事態が相次いだ。
  
  宮古島市が2014年度に実施した不法投棄ごみ撤去事業が違法だとして、市民6人が下地敏彦市長を相手に起こした住民訴訟を巡り、市が損害賠償を求め原告の市民を名誉毀損で提訴する議案が市議会9月定例会に提案された。


石垣市自治基本条例廃止条例案を否決した市議会。非自民系議員に理解は広まらなかった=12月16日、市議会

  下地市長が議案の取り下げを表明し、騒動はひとまず収まったものの、市側は「(原告側の)行動を注視する」としており、市民にプレッシャーをかけ続ける姿勢を変えていない。
  
  石垣市議会では市議会12月定例会で、与党の自民会派議員らが市自治基本条例の廃止条例案を提案した。市民からは困惑や批判の声が上がった。「自治体の憲法」とも称される自治基本条例が全国で初めて廃止される事態が迫ったが、非自民系の議員に理解は広がらず、廃止条例案は否決された。


<次点>南部九州総体 県内開催

  南九州の各県と和歌山県を開催地として全国高校総合体育大会「感動は無限大 南部九州総体」が7月24日から8月20日まで開催された。県内開催は2010年の美ら島総体以来9年ぶり。13市町村の31会場で8競技10種目が実施された。


南部九州高校総体なぎなたで活躍した選手ら=8月12日、那覇市の県立武道館

  なぎなたでは団体試合、個人試合、個人演技の3種目を県勢が制覇する快挙を成し遂げた。団体試合決勝は首里と知念の県勢対決だった。

  ソフトボール男子の読谷は4校同時優勝を決め、県勢として32年ぶりの頂点に立った。ハンドボールの男子興南、女子那覇西はともに3位入賞を果たした。女子バスケットボールの西原は県勢女子として23年ぶりに8強入りした。




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